鼻血が出る主な原因
鼻血の原因は大きく次の3つにわけられます。
中でも、鼻をほじったり、鼻を強くかむ、顔面にボールがぶつかる、小さな子どもに多い鼻に物を詰めるなどの物理的刺激が一番多い原因です。
鼻粘膜への刺激
鼻を強くかむ、くしゃみを連発する、鼻をほじったりこすったりするなどの刺激で、鼻の内部を覆う粘膜が傷つき、毛細血管が破れると出血が起こります。特に鼻の入り口付近にある「キーゼルバッハ部位」は血管が密集し、外部刺激を受けやすい構造のため、鼻血の約7~8割がここから発生します。また、顔面をぶつける、ボールが当たる、鼻骨骨折などの外傷、小さな子どもの異物挿入も物理的刺激となり、鼻血の原因となります。
病気や薬の影響
鼻血は、血液や全身の病気、服薬の影響でも起こります。白血病や血友病などの血液疾患、肝硬変・腎不全では血液を固める働きが弱まり、出血が止まりにくくなります。高血圧や動脈硬化、糖尿病などで血管がもろくなったり、血圧が高くなったりすることで鼻の毛細血管が傷つき、鼻血が出やすくなることもあります。また、心筋梗塞や脳梗塞の治療に使われる抗凝固薬や抗血小板薬などの血液をサラサラにする薬の服用は、止血しにくい鼻血の原因となります。
乾燥による影響
冬場や空調の効いた室内では空気が乾燥しやすく、鼻の粘膜も水分を失い、乾燥します。乾燥した手指の皮膚が切れて出血するのと同じように、鼻の粘膜が弱くなることで、ちょっとした刺激でも血管が傷つき、鼻血が出やすくなります。鼻でもひび割れやあかぎれが起きているような状態になります。特に乾燥が続く冬季には、鼻血の発生が増える傾向にあります。加湿器の使用やワセリンによる保湿が予防に有効です。
鼻血の正しい止め方
鼻血の多くは、鼻の穴の1~2cm程度の、鼻を左右に分ける壁の前方に位置する「キーゼルバッハ部位」から出血します。鼻血を止めるには、この部位をピンポイントで圧迫する鼻翼(びよく)圧迫法が最も有効な方法です。
①落ち着いて座る
鼻血が出たら、まず落ち着いて椅子に座り、軽く前かがみになって下を向きます。上を向くと血液が喉に流れ込み、誤嚥や嘔吐の危険があるため、上を向かないように気をつけます。鼻血が口に入った場合は吐き出しましょう。また、高齢者など体力が弱くて座ることが難しい場合は、出血している側を上にして横向きになる方法も可能です。繰り返しになりますが、仰向けはNGです。血液が喉に流れ込んでしまうので注意しましょう。
②小鼻をしっかり圧迫する
親指と人差し指でやわらかい小鼻部分を強めに押さえます。すると、出血源であるキーゼルバッハ部位を圧迫することになり、効果的に止血できます。鼻の骨を感じる硬い部分ではなく、やわらかい部分を押さえましょう。押さえる場所が大切で、鼻の付け根周辺や上部の骨の部分を圧迫しても止血しづらく、逆に粘膜を傷つけるおそれがあります。
③5~10分間圧迫を続ける
確実に止血するためには、圧迫は途中で離さず5~10分続けることが重要です。止血できたかは出血の有無で確認します。止血後は、物理的な刺激を与えないように注意します。セルフケアで止血しない場合は、耳鼻科を受診しましょう。
やってはいけない止め方
間違った止血方法に注意。次の3つの方法は、避けましょう。
これらは安全性に欠けるため、正しい圧迫法をおこない、確実な止血を試みましょう。
上を向く
上を向くと鼻血が喉に流れ飲み込んでしまうことで、誤嚥や嘔吐を引き起こすことがあります。その際に横になっていると、吐しゃ物で窒息するおそれも。安全性が保たれない間違った止血方法ですので、鼻血の際は必ず下を向きましょう。
鼻にティッシュを詰める
ティッシュを鼻に詰めるとティッシュの繊維が粘膜を傷つけたり、奥に入り取れなくなる恐れがあります。また、ティッシュを抜く際にかさぶたをはがしてしまい、さらなる出血につながることも。ティッシュをつたって鼻血が流れることも、止まりにくい原因になります。
鼻を冷やす
鼻を冷やすと血管が収縮して止血できるという説がありますが、科学的な根拠はありません。鼻の冷却は鼻血を止める有効な方法とは言えず、正しい圧迫止血の代わりにはなりません。
子どもが鼻血が出やすい理由は?
鼻の構造の特徴
子どもは鼻粘膜が大人より薄く、血管も傷つきやすいため、少しの刺激でも鼻血が出やすくなります。また、成長とともに鼻中隔が弯曲する「鼻中隔弯曲症」は、大人の多くに見られますが、症状がなければ治療は不要です。
鼻を触る癖
小児は無意識に鼻をほじる癖があり、爪先などの物理的刺激で粘膜が傷つき、出血を起こしやすくなります。いったん傷ついた粘膜は刺激に弱くなり、同じ場所から繰り返し出血することがあります。特に爪が長かったり、手が不潔だったりすると、リスクが高まります。
病院へ行くべき鼻血の症状
通常の止血方法で10分以上も止まらない場合は、医療機関を受診しましょう。粘膜より深い出血、後方部など自己止血が難しい場所からの出血であることがあります。出血量が多い場合は、動脈からの出血の可能性があり、医療機関での迅速な対応が求められます。また、頻繁に繰り返す場合は、鼻のがん、腎臓や肝臓の病気、全身の血管に異常が生じるオスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)といった病気が潜んでいることもあります。発熱といったほかの症状をともなう場合は、白血病などの血液疾患が疑われることも。いち早く医療機関を受診し、精密検査が必要なケースがあります。鼻血には重篤な病気が隠れていることがあるため、早期の受診で原因を突き止めることが大切です。
鼻血の予防方法
鼻を触らない
子どもによく見られる鼻ほじりの癖は粘膜を傷つけ、繰り返す鼻血の原因となるため、子どもだけでなく大人も習慣にならないように気を付けたいところ。特に小児には、やってはいけないことであることを絵本やイラストで伝え、こまめな爪切りで傷つけにくくすることも大切です。保護者の声かけと習慣づけが予防につながります。
室内の湿度を保つ
空気が乾燥すると鼻の粘膜も乾き、ひび割れて出血しやすくなります。加湿器を使い、室内の湿度を適度に保ちましょう。加湿器は清潔に保ち、就寝時にも使用すると効果的です。また、鼻の乾燥が気になるときは、白色ワセリンを綿棒で少量、鼻の入り口付近にやさしく塗ることで保湿できます。乾燥を防ぐ環境づくりが、鼻血予防には重要です。
まとめ
鼻血の多くは、キーゼルバッハ部位から生じ、鼻をほじる・強くかむなどの物理的刺激が原因ですが、乾燥や病気、薬の影響によっても起こります。正しい止血法は「鼻翼圧迫法」です。上を向いたり、鼻にティッシュを詰めたり、冷やしたりといった間違った対処法は症状を悪化させることも。子どもや高齢者では特に注意が必要です。10分以上止まらない、頻繁に繰り返す、ほかの症状をともなう場合は早めの受診を。日頃からの予防策も忘れずに、落ち着いて適切に対応しましょう。
|
監修者: 渡邊 雄介医師 |
耳鼻咽喉科音声言語医学専門/国際医療福祉大学教授/山王メディカルセンター副院長/東京ボイスセンターセンター長
1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。