そもそも『傷』とは?
「傷」とは、外から加わった力によって皮膚が削れたり裂けたりし、内部の組織が損なわれた状態を指します。転倒によるすり傷、カッターナイフやガラス片による切り傷、トゲや釘での刺し傷など、日常生活のさまざまな場面で傷ができる可能性があります。紙のフチでできる紙傷やかきむしりによるかき傷、靴ずれなども同じく皮膚が損傷した状態です。
皮膚には外界から体を守るバリア機能がありますが、傷ができるとその働きが一時的に弱まり、細菌が侵入しやすくなります。傷の程度によっては、赤み・腫れ・痛み・熱感といった炎症が起こることもあります。
傷にはどんな種類があるの?
傷には、次のような種類があります。
傷が自然に治る仕組みについて
皮膚に傷ができると、体はすぐに修復を開始します。まず血管が傷ついて出血すると、血小板が集まって血を固め、細菌が入り込まないように傷口をふさぎます。次に白血球やマクロファージと呼ばれる免疫細胞が働き、傷口に入り込んだ細菌やゴミを除去しながら清潔な状態を保ちます。この段階では、体液がにじんでくることがありますが、傷を守るための正常な反応です。
体液が乾くと「かさぶた」が形成され、その下では毛細血管が再び伸び、栄養を送りながら組織の修復が進みます。表皮が新しく作られると傷は少しずつふさがり、最終的にかさぶたが自然に剥がれ落ちます。剥がれた後は、新しい皮膚が表面を覆い、傷は安定していきます。
傷が化膿する仕組みについて
傷口に汚れが残っていたり、異物や壊れた皮膚片が入り込んだりしたままになっていると、細菌が付着しやすくなります。化膿とは、こうした細菌が皮膚内で増えて体の免疫反応が強まり、赤み・腫れ・熱感・痛みが生じ、やがて膿が出るようになった状態のことです。特に傷が深い場合は、目に見える傷口が小さくても皮下に細菌が入り込み、時間がたってから化膿してくることもあります。
膿の正体は、細菌と戦って死んだ白血球、壊れた細菌、組織の破片が混ざったもので、粘り気や臭いがあり、黄色~緑色を帯びるのが特徴です。化膿の原因菌には、ブドウ球菌・連鎖球菌・緑膿菌などがあります。化膿が進むと治りが遅くなるだけでなく、周囲へ感染が広がったり、抵抗力の弱い人では重症感染症に発展したりすることもあるため注意が必要です。
傷口が白い状態は大丈夫?
傷口が白く見えると「化膿しているのでは?」と心配になりますが、必ずしもそうとは限りません。傷から出る透明〜薄い黄色の液体は滲出液と呼ばれ、血小板や白血球、修復に必要なタンパク質を含む治癒のための液体です。この滲出液が乾いたり固まったりすると、白〜黄白色のフィブリン膜と呼ばれる膜が張ることがあります。
一方、膿は細菌と戦って壊れた白血球や細菌の死骸が混ざったもので、白〜黄色・緑色で粘り気や臭いを伴います。赤み・腫れ・熱感が強い場合は化膿している可能性が高く、注意が必要です。
傷が化膿したらどうすればいい?
傷が化膿してしまった場合は、早めの対処が重要です。軽度ならセルフケアで改善できますが、症状によっては医療機関の受診が必要になることもあります。ここでは具体的な対策を紹介します。
対策1.セルフケアで対策する
軽度の傷であれば、自宅でのセルフケアで十分に対処できることが多く、正しい処置をおこなうことで治りを早め、化膿を防ぐことができます。最初におこなうべきは洗浄です。砂や泥、ほこりなどが付着していると感染の原因になるため、水道水で傷口とその周囲をしっかり洗い流します。洗浄後は清潔なガーゼで水分を軽く拭き取りましょう。汚れがひどい場合や感染が心配な場合は、市販の消毒薬を使うことも効果的です。
出血している場合は、清潔なガーゼやハンカチを当てて数分間押さえ、圧迫止血をおこないます。腕や脚の傷であれば、患部を心臓より高い位置に保つと止血しやすくなります。
血が止まったら、絆創膏や保護パッドで傷を覆い、乾燥や摩擦から守ります。化膿の兆候がある場合は、消毒後に抗生物質配合の軟膏を使い、清潔な状態を保つことが大切です。軽度の傷でも、適切なセルフケアが治癒のスピードに大きく影響します。
対策2.医療機関を受診する
軽度の傷であればセルフケアで改善できますが、状況によっては早期に医療機関を受診することが重要です。以下のようなケースは、自分で無理に処置を続けると悪化するおそれがあるため、速やかに受診しましょう。
受診先は形成外科、皮膚科、外科、子どもの場合は小児外科でもよいでしょう。
傷の化膿を予防することはできるの?
日常生活の中で起こるすり傷や切り傷は、どれだけ注意していても完全に防ぐことは難しいものです。そのため、万が一のケガに備えられるよう、日頃から予防策を整えておくことが大切です。たとえば、外出時に小さめの救急セット―絆創膏、消毒薬、ガーゼなど―を携帯しておくと、すぐに応急処置ができ、化膿のリスクを下げられます。
屋外で活動する際は、なるべく皮膚を露出しないことも予防につながります。登山・公園遊び・軽作業などでは、長袖・長ズボンを着用し、手を使う作業では軍手や作業用グローブで皮膚を保護しましょう。スポーツでは、ストッキングやレッグガード、サポーターを装着することで擦過傷を防ぎやすくなります。
「傷を完全に防ぐこと」は難しくても、「ケガをしても悪化させない工夫」をしておくことで、化膿のリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
傷は正しく洗浄し、清潔を保てば自然に治ることが多い一方、汚れや細菌が残ると化膿し、痛みや腫れなどのトラブルにつながります。救急セットの携帯や服装の工夫など、日頃から予防策を講じることで、ケガの悪化を防ぐことができます。
化膿した傷は早めの対処が重要で、軽度であればセルフケアで改善できますが、異物が取れない・痛みや腫れが強い・改善しないなどの場合は医療機関を受診しましょう。
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監修者: 高藤 円香医師 |
2013年防衛医科大学校を卒業後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得し、自衛隊阪神病院勤務に。皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。