2026.05.18
健康

【医師監修】斜視とは?治し方や原因について解説!

斜視とは

斜視とは、眼の視線がそろわない状態を指します。片方の眼が正面を向いていても、もう片方が違う方向を向くため、左右の視線が合いません。

斜視の状態では正しく両眼視ができず、ものを立体的に見ることが難しくなることがあります。斜視を発症する時期が早いと、両眼同時にものを立体的にみる働き(両眼視機能)の成長が妨げられたり、片眼だけ視力が十分に発達せず弱視になったりするリスクがあります。

斜視はおよそ50人に一人にみられるとする報告もあり、決して珍しいものではありません。

斜視の症状が常に起きているものを「恒常性斜視」、普段は正常で時どき斜視の症状があらわれるものを「間歇性斜視」といいます。日本やアジアに多いとされているのが間歇性外斜視です。

斜視の主な症状

斜視になると、眼の位置のずれだけでなく、2つのものが1つに重なって見える「混乱視」やものが二重に見える「複視」が生じることがあります。

見え方のずれを補正するために、無意識に首を傾けて頭の角度を調整する仕草がみられる場合もあります(頭位異常・斜頸)。

・ 混乱視...... 2つのものが1つに見える。
・ 複視...... ものが二重に見える。ものの見え方が左右の眼で一致しないことで生じる症状で、後天性の斜視で多くみられます。
・ 抑制...... 片方の眼から入ってくる情報が受け取りにくくなる。子供に多く生じる症状で弱視の原因にもなります。
・ 頭位異常・斜頸...... ふだんから首を傾けていたり、頭を回したりしてものを見る。斜視による見え方のずれを補整するために、頭の位置を調整することで生じると考えられています。

斜視の種類

斜視は、視線があわないほうの眼が向く方向によって分類されます。

・ 内斜視...... 眼が内側に向く斜視。ものが二重に見える(複視)や視力の低下を招きます。生まれた時から内斜視の症状がある(先天性内斜視)場合もあります。赤ちゃんがものを片眼で見る、眼を擦るなどの仕草が頻繫に見られる場合、内斜視の可能性があります。
・ 外斜視...... 眼が外側に向く斜視。常に外斜視になっているものを恒常性外斜視(こうじょうせいがいしゃし)、眼が正面を向いている時があるものを間欠性外斜視(かんけつせいがいしゃし)と呼びます。
・ 偽斜視...... 視線がそれていて斜視のようにみえても、実際には両眼の視線がそろっている状態。眼球運動の異常が原因と考えられています。本当の斜視との見分けは困難です。
・ 上下斜視...... 右眼か左眼どちらかの視線が上下にずれた状態。眼球が回転することで、ものが傾いて見えたり、左右の像が交差して見えたりする「回旋斜視」や内・外斜視に合併することが多いとされています。

斜視の原因

斜視の原因には、主に次のようなものがあると考えられています。

・ 眼球を動かす筋肉・神経の異常...... 眼球を動かす筋肉や神経に異常があると眼の位置がずれ、両眼で一緒に正しくものを見ることができず、斜視になります。
眼の周りには「外眼筋」と呼ばれる筋肉(上直筋、下直筋、外直筋、内直筋、上斜筋、下斜筋)があり、相互に収縮・弛緩することでピントを調整しています。近くを見る時は内直筋が縮み、外直筋が緩み、遠くを見る時は外直筋と内直筋が緩むといった具合です。
近年患者が増えている「スマホ急性内斜視」は、スマートフォンなどの小さな画面を、至近距離から長時間見続けることで、内直筋の緊張状態が続くことが原因と考えられています。
・ 視力不良(弱視)...... 片方の眼の視力が落ちると、両眼視ができず、視力の悪い眼が斜視になる場合があります(感覚性斜視)。特に5~6歳ごろの、両眼視機能が完成する前に視力障害が起こると感覚性内斜視になりやすく、成人では感覚性外斜視になりやすいといわれています。
・ 加齢...... 加齢によって眼の筋肉周囲の組織が緩み、筋肉が垂れ下がることで起こります(加齢斜視)。60代以降に多く、複視が主な症状です。

斜視の治し方

斜視の治療法は、種類や年齢によって異なります。自分に合った治療法を選ぶ必要があります。

1. コンタクトレンズ、メガネの使用

コンタクトレンズやメガネを装用することで、遠視や近視を補正するものです。遠視を原因とする、調節性内斜視などに有効です。主に子供を対象としたもので、大人への効果は期待できません。

大人の場合、プリズムレンズという光の屈折を変えるレンズを使用したメガネを使用する方法があります。光の進路を屈折させてずれを補正することで、複視を防ぐものです。複視を伴う斜視や眼球運動障害による複視に効果があるとされています。

ただし、複視が解消されるのはメガネを着用している間だけで、根本的な解決にはなりません。

また複視がない場合や、正面視以外の複視、斜視の角度が大きい場合には効果は得られません。

2. ボツリヌス注射

ボツリヌス注射は、筋肉を弛緩させる効果がある「A型ボツリヌス毒素」を外眼筋に注射し、眼の位置のずれを改善する治療です。日本では2015年に承認され保険適用となりました。

効果は通常、投与後2〜3日であらわれ、2~4週間でピークを迎えます。その後3〜4か月で減っていくため、効果が低下してきたころ、医師と相談の上で再度注射を検討します。症状の改善度合いに応じて、再投与の際の薬剤の量を増減することで、眼の位置を微調整できるメリットがあります。

ただし、ボツリヌス療法は12歳以下は受けられません。またボツリヌス菌には筋弛緩作用があるため、重症筋無力症やランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症など、筋肉の疾患がある人も対象外です。

3. 遮閉法

斜視でないほうの眼を眼帯やアイパッチなどで隠し、斜視の眼を使ってものを見る治療です。遮閉法は、主にものを見る能力が完成していない子どもの斜視や弱視を改善することを目標とした治療で、身体への負担が小さく、簡単にできるメリットがあります。ただし即効性はなく、大人の斜視には効果が期待できません。

4. 手術治療

斜視の手術治療は、外眼筋の位置や長さを調整することで眼の位置を整えるものです。手術時間は1つの筋肉につき20~30分程度で、片眼の2~3つの筋肉に施術する場合が多いです。大人の場合、局所麻酔で日帰り手術も可能ですが、子供の場合、入院して全身麻酔で手術を行います。

・ 後転術...... 外眼筋を後ろに移動させることで筋力を弱める方法。外眼筋を切り離し、元の場所より後方に縫い付ける
・ 短縮術...... 外眼筋を切って短縮することで筋力を強める方法。外眼筋を一旦切り離し、元の場所に縫い付ける
・ 移動術...... 正常な筋肉の位置を変え、筋力の作用方向を変える方法。高度な麻痺性斜視にも有効とされている

斜視の手術では、通常数年~数十年間、眼の位置を正常に近づける効果が期待できます。ただし再発(戻り)が生じるリスクもあります。眼の位置は整っても、両眼視機能は改善されないケースもある点にも留意が必要です。

まとめ

斜視は少しずつ進行します。子供の異変に気が付いたら、なるべく早く対策をすることが重要です。また近年では、大人の斜視も増えています。スマートフォンなどの画面をみる時は、画面から眼を離し、適度に休憩するなど普段から眼をいたわる生活を心がけるようにしましょう。

斜視に関するQ&A

斜視は遺伝しますか?

斜視の発症には、遺伝的な要素が関係しているとする報告もあります。斜視が直接遺伝する場合もあれば、遠視や左右の視力差など斜視の誘発要因となり得る体質が遺伝する場合もあります。

環境的要因により、初めて斜視があらわれることもあります。そのため近親者に斜視がある場合は、幼少期から保護者が注意深く観察し、早期発見できるようにすることが大切です。
なお、遺伝的な素因があっても発症しないこともあります。

斜視は自宅で対策できますか?

眼の周りの筋肉を動かす運動や、近くを見たり遠くを見たりする運動(輻輳・開散運動)をすることで、両眼視機能や立体視機能を鍛えることができます。

・ 眼の周りの筋肉の運動...... 上下左右に眼を動かし、眼をぐるぐる回す
・ 輻輳・開散運動(ふくそう・かいほう)運動...... 近くを見つめることで左眼を右に、右眼を左に動かしたり、遠くを見つめることで右眼を右に左眼を左に動かしたりする
・ ブロックストリングスを使ったトレーニング...... 3つ(以上)のビーズを紐に通し、それぞれを両眼で見つめてピントを合わせる

また日ごろから、眼を酷使しないように意識することも重要です。

特にスマートフォンやタブレットなどのデジタル端末を使用する時は、画面と眼を50センチ上離すようにしましょう。長時間画面を見続けることは避け、時どき視線を外すことで眼の負担を減らすことができます。

目安として、連続して20分デジタル端末の画面を見たら、20フィート(約6メートル)離れたところを20秒間見つめるようにしましょう(20-20-20ルール)。

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監修者: 新田 凌也医師

奈良県立医科大学眼科学教室/医療法人新進会にった眼科クリニック
島根大学医学部卒業。神戸大学医学部附属病院にて初期研修を修了後、奈良県立医科大学眼科学教室所属
眼腫瘍および眼形成領域を専門とし、機能面と整容面の双方を重視した診療に従事
日本眼科学会/眼形成学会/眼腫瘍学会

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