お酒を飲み過ぎた翌日にやってくる辛い二日酔いは、一刻も早く治したいもの。
ここでは、そんな二日酔いを早く治す方法や、辛くならないための予防法について解説します。
3. 二日酔い時のNG行為
二日酔いには厳密な定義はなく、症状にも個人差があります。一般的には吐き気や頭痛、下痢、めまい、眠気などが現れることが多いとされています。
二日酔いは、吐き気や頭痛などの症状をともないます。そのため、日常生活や仕事に支障をきたすこともしばしば。
ここでは、生活や仕事を妨げる二日酔いを早く治すための方法について解説します。
アルコールは、肝臓で「アセトアルデヒド」と呼ばれる物質に分解されます。
アセトアルデヒドには、吐き気や頭痛、動悸などを引き起こす作用があり、二日酔いの原因になると考えられ、発癌性も疑われています。
十分に水分を摂取することで血中のアセトアルデヒドの濃度を下げ、二日酔いの症状を緩和できます。
肝臓はアルコールを分解する働きを担いますが、その分解時に糖質が必要となります。さらに、ブドウ糖を生成し血糖値を上げる役割も担っていますので、アルコールが体内に入ることでその働きが妨げられ、低血糖状態になります。お酒を飲んだ後に〆のラーメンが食べたくなるのも、これが一因といわれています。
頭痛やめまいなどの二日酔いの症状を助長する低血糖状態を解消し、アルコールの分解を促進するためには、糖質を摂取することが大事です。二日酔いのときには、おかゆなどを食べて糖質を摂取することをオススメします。
ほかにも、スポーツドリンクやトマトジュースなどで水分補給することも効果的です。スポーツドリンクには糖分が含まれるため、水分補給以外にも低血糖の解消にもなります。また、トマトジュースに含まれるリコピンには、アセトアルデヒドの作用を抑える効果があるといわれています。
二日酔いの症状を緩和するといわれているツボを押すことで症状を和らげる効果が期待できるかもしれません。ここでは、二日酔いのときにおススメのツボを紹介します。
ツボを押すときは気持ちが良い程度の力で「3秒押して3秒離す」を、3~5回繰り返しましょう。飲酒前に押せば、二日酔いの予防効果も期待できます。
<二日酔いに効くツボ>
〇合谷(ごうごく)......親指と人さし指の骨が交差した場所にあるツボ。頭痛や胃腸の不調改善に効果が期待できる。
〇百会(ひゃくえ)......左右の耳を結んだ線と体の中心線が交わった場所にあるツボ。頭痛に効果が期待できる。
〇風池(ふうち)......後頭部の髪の生え際の真ん中と耳の後ろにある尖った骨を結んだ中間地点にあるツボ。頭痛やめまいに効果が期待できる。
〇足臨泣(あしりんきゅう)......足の甲の薬指と小指の付け根から足首側に約3㎝の場所にあるツボ。頭痛に効果が期待できる。
〇内関(ないかん)......手首から腕の方へ指3本分の場所にあるツボ。吐き気やめまい、胃の不快感や頭痛に効果が期待できる。
〇手三里(てさんり)...... 手の甲側、肘を曲げるとできるシワから手首側に指3本の場所にあるツボ。吐き気や頭痛に効果が期待できる。
〇魚際 (ぎょさい)......親指のつけ根のふくらみにあるツボ。胃もたれ改善効果が期待できる。
無理をして動き回ると、二日酔いの症状が悪化したり、回復が遅くなったりする恐れがあるため、安静にすることが大切です。
ゆっくりと身体を休めることが、二日酔いを早く治すことにつながります。
二日酔いの症状があるときにおこなうと、症状が悪化したり治りが遅くなったりする行為があります。
ここでは、そんな二日酔い時にNGな行為について解説します。
二日酔いの症状を改善する目的で、さらに飲酒することを迎え酒といいます。迎え酒で二日酔いは治るという人がいますが、これには根拠がありません。迎え酒では、二日酔いは改善できないのです。
飲酒を重ねることで二日酔いを長引かせる原因になるだけでなく、アルコールの過剰摂取により、健康リスクも高まってしまいます。
二日酔いのとき、身体は脱水傾向にあります。そのため、激しい運動をして大量に汗をかくことで脱水がさらに進み、体内のアルコール濃度が高まります。
同じ理由で熱い風呂に入ったり、サウナを利用したりするのもNGですので、注意してください。
アルコールによる頭痛は、アセトアルデヒドが血管拡張し神経を圧迫することで引きおこされます。
カフェインには血管を収縮させる作用があるため、少量であれば二日酔いの頭痛緩和効果も期待できます。
しかしカフェインには利尿作用があり、大量に摂取すると脱水を招くため、二日酔いの症状が悪化する原因になります。
また、アルコールは肝臓で代謝されますが、カフェインも肝臓で代謝されるため、二日酔いのときにカフェインを摂取するとカフェインの代謝が遅れ、結果としてカフェインが体内に蓄積されやすくなり、カフェイン中毒もおきやすくなります。
脂質は胃酸の分泌を促進し、二日酔いの症状が悪化する原因になります。二日酔いのときは、唐揚げやフライドポテトなど脂っこいものを食べるのは控えましょう。
胃のなかでは胃酸が分泌されますが、同時に「胃粘液」もバランスよく分泌され、胃の粘膜を保護しています。アルコールにより胃酸が過剰に分泌されると、このバランスが崩れ、胃の粘膜にダメージが及びやすくなります。
つらい二日酔いは、できることなら未然に防ぎたいもの。
ここでは飲酒当日にできる、二日酔いの予防法を紹介します。
二日酔いを予防するには空腹時の飲酒は避け、食事をとりながら飲酒することが大事です。
体内に入ったアルコールは食道を通り、胃で20%、小腸から残りの80%が吸収されます。
飲酒時に積極的に摂取したいメニューとしては、以下のようなものがあげられます。
積極的に摂取したいメニュー | 摂取できる栄養素 | 期待できる効果 |
親子丼 | ・タンパク質 ・ビタミンB群 |
・アルコールの代謝を促進する |
しじみの味噌汁 | ・グルタミン酸 ・タウリン ・アラニン |
|
枝豆 | ・タンパク質 ・ビタミンB群 |
・肝臓の働きを高める |
親子丼に使用される鶏肉には、アルコールの分解を促進し、肝臓の働きを高める効果が期待できるタンパク質が豊富に含まれ、卵には肝臓の働きを向上させるビタミンB群が豊富です。
しじみの味噌汁で摂取できる味噌には、アルコールの代謝を促進するグルタミン酸が、二日酔い予防に効果が期待できます。
豆腐や枝豆などの大豆製品には、タンパク質やビタミンB群が豊富なので、飲酒時のおつまみにするのもオススメです。
アルコールには利尿作用があり、お酒ばかり飲んでいると脱水症状を引き起こします。そのため、お酒だけでなく水を摂取することで、胃のなかのアルコール濃度も下げることができ、二日酔いの予防にもつながります。
お酒の種類や飲み方に配慮することも、二日酔いの予防策として有効です。
例えば、お酒の種類としては焼酎やウィスキー、ブランデーなどの蒸留酒を選ぶとよいでしょう。とくに蒸留酒は、蒸留の過程で不純物が取り除かれるため体内で分解されやすく、比較的二日酔いになりにくいといわれます。
二日酔いを予防するには、飲み過ぎないことも重要です。
飲酒量を計算する際に肝心なのが、摂取したお酒の量ではなく、摂取したアルコールの量である、純アルコール量を基準にすることです。
厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」を、1日平均純アルコールで約20gとしています。個人差もありますが、一般的に飲み過ぎといわれるのは60gです。自分の適量を把握し、飲み過ぎにしましょう。
参考:厚生労働省「アルコール」
主な酒類のアルコール度数と純アルコール量の目安は、以下のとおりです。
お酒の種類 | アルコール度数 | 純アルコール量 |
ビール |
5% | 20g |
清酒 |
15% | 22g |
ウイスキー・ブランデー |
43% | 20g |
焼酎(35度) |
35% | 50g |
ワイン |
12% | 12g |
引用:厚生労働省「主な酒類の換算の目安」
二日酔いを早く治すには、水分を摂取したり糖質を摂取したりして、アルコールの分解を促進することが重要です。
二日酔いのときにさらにお酒を飲んだり、激しい運動をしたりといった行動をとると症状が悪化し、治りが遅くなるおそれがあるので注意しましょう。
監修者:木村 眞樹子医師 |
東京女子医科大学医学部卒業後、循環器内科、内科、睡眠科として臨床に従事している。
妊娠、出産を経て、また産業医としても働くなかで予防医学への関心が高まった。医療機関で患者の病気と向き合うだけでなく、医療に関わる前の人たちに情報を伝えることの重要性を感じ、webメディアで発信も行っている。