最初に頭皮がかゆくなる主な原因を紹介します。
汗をかいたまま長時間放置することで、汗疹(あせも)を生じることがあります。汗疹は汗の出口がふさがり炎症を起こす疾患で、かゆみをともなうケースが多いです。
汗疹は熱い夏だけでなく、暖房環境で過ごすことが多い冬場にも注意しなければなりません。
また自分に合わないパーマ剤やカラーリング剤などの薬剤を使うことで、頭皮に炎症がおき、かゆみを生じる場合があります。
パーマ剤やカラーリング剤に含まれるかゆみの原因物質には、例えば次のものがあげられます。
・パラフェニレンジアミン
・メタアミノフェノール
・パラアミノフェノール
・トルエン-2
・5-ジアミン
パーマ剤やカラーリング剤など薬剤でかぶれやすい人は、事前にパッチテストをおこなうとよいでしょう。
頭皮が乾燥しているとかゆみや痛みを生じる場合があります。
頭皮の乾燥を引き起こす要因の1つとして考えられるのが紫外線です。日ごろから日焼け止めを塗っている方でも、頭皮の紫外線対策は忘れてしまいがちです。
長時間、日光を浴びる時は、頭皮にも使用できる日焼け止めを使用する、帽子を被るなど、紫外線のダメージを抑える工夫をしましょう。
フケ症とは、頭皮の角質層が剥がれ落ちる症状のことです。
かきすぎてしまうと頭皮がダメージを受け、脂漏性皮膚炎に進行し、かさぶたができる場合もあります。脂漏性皮膚炎とは、皮脂腺の密度が高い頭皮や顔、わきなどの部位に生じる炎症のことです。脂漏性皮膚炎は人口の3~5%に発症するといわれており、男女比は2:1と男性で多くみられます。
湿疹により頭皮がでこぼこしたり、皮が剥けてカサカサになったり、細かい皮膚がポロポロとむけ落ちたりすることがあります。
頭皮のかゆみ改善のためには正しい方法でシャンプーをすることが重要です。シャンプーの際に、爪を立てたり、硬い頭皮ブラシを使用したりすると頭皮に刺激を与えてしまうため、注意しましょう。
シャンプーを手のひらで泡立て、指の腹でマッサージをするように洗い、シャンプーが頭皮に残らないようにしっかり洗い流すことが大切です。
頭皮は、皮脂の分泌が盛んな部位です。その上、頭皮には皮脂や汗などを栄養とするマラセチア菌と呼ばれる皮膚常在菌が存在しています。
皮脂が過剰に分泌することにより、マラセチア菌や細菌のバランスが崩れて、頭皮が刺激を受け、ターンオーバーが乱れてふけが大量に発生してしまうことがあります。実際に、皮脂分泌量の多い人は、かゆみやふけなどの頭皮トラブルを起こしやすいことを示唆する実験データもあります。皮脂の過剰分泌は夏季だけでなく冬にもおきます。
肌が乾燥しがちな冬場は、肌を守るため皮脂が多く分泌されるのです。
皮脂の過剰分泌が原因で頭皮にかゆみがある場合は、頭皮を清潔に保ちましょう。
次に頭皮にかゆみを緩和するセルフケアについて紹介します。
頭皮のかゆみが長期間改善しない場合は、シャンプーが合っていない可能性があります。
かゆみや炎症が長引く場合には低刺激性のシャンプーや薬用シャンプーを使用すること有効です。薬用シャンプーについては、頭皮のかゆみ改善効果が確認されています。
普段、シャンプーをなんとなく選んでいる場合は、薬用シャンプーに変えて正しい頭皮ケアをおこなってみましょう。
頭皮の血行を促進したり頭皮環境を整えたりすることも、かゆみ改善には大切です。頭皮マッサージをすると、血流が促され、頭皮環境が整うことがわかっています。頭皮マッサージをすると、頭皮のかゆみ対策になります。
1.両手の指の腹で、頭全体をやさしく指圧
指の腹で頭全体をやさしく指圧します。ポイントは強く押しすぎないことです。
2.髪の生え際から頭頂部にかけて、押していく
生え際から、ゆっくりと上に向かって指圧していきます。頭の頂点に向かって、少しずつ移動させながらおこいましょう。
3.指先を使って頭皮を弾くようにマッサージ
頭皮を優しくつまみ上げます。爪を使わないことがポイントです。
4.両手のひらで円を描くように揉み上げる
頭全体を包み込むように、地肌をやさしく揉み上げます。
過剰なシャンプーも頭皮のかゆみの原因になることがあります。
シャンプーをおこなう回数が多いと、必要な皮脂まで取ってしまい、乾燥につながってしまいます。頭皮が乾燥することによってバリア機能が低下し、かゆみが起こってしまうのです。
頭皮がかゆいと、一日に何回も洗いたくなってしまうかもしれませんが、基本的には一日一回がおすすめです。ただし、乾燥肌や敏感肌の方が毎日シャンプーをすると、肌の乾燥を招き、かゆみにつながることがあります。乾燥肌や敏感肌の方は2~3日に1回のシャンプーがおすすめです。
熱すぎるお湯でシャンプーをすることも、頭皮のかゆみを招きます。
わたしたちの皮膚には『バリア機能』と呼ばれる機能が備わっていて、異物の侵入を防いだり、肌の中の水分を閉じ込めたりしています。
バリア機能が正常に働くためには、油分(皮脂)と水分のバランスが適切に保たれていなければなりません。熱すぎるお湯でシャンプーをすると、皮脂が洗い流されてしまい、バリア機能が乱れて肌が乾燥します。結果として頭皮のかゆみにつながるわけです。
シャンプーの際は、お湯の温度を調整し38度〜40度に設定するのがおすすめです。
頭皮にシャンプーやリンスが残っていると、かゆみにつながってしまう場合があります。しっかり流したつもりでも、すすぎ残しがあることは少なくありません。
襟足から生え際にかけて指をジグザグ動かしながら、しっかりすすぐことが大切です。
自然乾燥は髪や頭皮のうるおいを必要以上に蒸発させて乾燥を招き、頭皮のかゆみにつながることがあります。シャンプーのあとはドライヤーを使って乾かすことが大切です。
1.タオルドライする
まず、シャワーやお風呂の後、髪をタオルで優しく押さえるように水分を取ります。ゴシゴシと強く擦ると髪が傷みやすくなるので避けましょう。
2.温風で8割乾かす
次に、髪の8割程度を温風で乾かします。ドライヤーの距離が近すぎたり、同じ場所に温風を長時間当てたりすると頭皮の乾燥につながってしまう場合があるので注意が必要です。
ドライヤーは、頭皮から15cm程度離し、当てる場所を移動させながら乾かしましょう。
3.冷風を数分髪の毛に当てる
最後に数分間、冷風を全体に当てます。
頭皮は体のほかの部位と比べて、保水機能やバリア機能が低いといわれています。
しかし頭皮は自分の目で確認することが難しいため、ケアが行き届かず、気が付かないうちに症状を悪化させてしまうこともあるようです。
頭皮のかゆみは、乾燥が原因のこともあるため、保湿剤の入ったシャンプーや頭皮用ローションなどを使って、保湿ケアをしっかりおこなうとよいでしょう。
頭皮ケアの見直しは頭皮のかゆみ対策のポイントですが、何をやってもかゆみが軽減されない場合は、薬を利用するのも選択肢です。
かゆみに効く市販薬として代表的なものに、ステロイド外用薬が挙げられます。
ただし市販薬には、さまざまな種類がありどれを選んだらよいかわからない場合もあるかもしれません。その場合には自分で判断せず、薬剤師や登録販売者に確認をしましょう。
頭皮のかゆみを軽減するためには、毎日のシャンプーを見直すことが大切です。
頭皮にかゆみがあるとシャンプーをたくさん使いたくなってしまうかもしれませんが、シャンプーをたくさん使ったからといってかゆみが軽減するわけではありません。
シャンプーやリンスは適量を守りましょう。ゴシゴシ擦るのではなく、優しく洗うことが大切です。
頭皮が乾燥してかゆみがおきている場合は、1〜2日に一度、頭皮の皮脂が多い方は、毎日洗髪をおこなう必要があります。
【正しいシャンプーの方法】
1:ブラッシングで髪の絡まりをとく。
2:ぬるま湯で頭皮を軽くマッサージをしながら汚れを落とす。
3:適量のシャンプーを少量ずつ髪につけ、よく泡だてて洗う。
4:すすぎ残しのないように、たっぷりのぬるま湯で洗い流す。
5:リンスやコンディショナーを付け、しっかり洗い流す。
6:ドライヤーでよく乾かす。
不摂生をしていると肌荒れを起こすことがあるように、頭皮の健康も生活習慣が関係していることがあります。肌の健康のカギは、睡眠です。まずは、十分な睡眠をとれるように生活リズムを整えることを意識してみましょう。
またストレスを溜めすぎると頭皮や肌のトラブルが起きる場合があります。
頭皮も皮膚の一部であり、頭皮のかゆみや炎症は肌荒れの一種といえます。肌のスキンケアをするのと同じように頭皮の健康のために生活習慣を整えることを心がけましょう。
記事の中で紹介した市販薬の活用のほか、患部を冷やすことも有効です。冷やすことでかゆみの知覚神経の興奮が鎮まり、かゆみが和らぎます。ただし直接皮膚に当てすぎないよう注意が必要です。
氷嚢やアイスノンなどを使って冷やしましょう。
多少かくくらいなら問題ありませんが、かき過ぎると、炎症を引き起こし、さらなるかゆみを招くことがあります。
またかきむしると、頭皮に傷がつき、細菌が入り込むおそれもあります。かゆくても、できるだけかきむしらないようにし、薬を使う、冷やすなどの方法で対処しましょう。
薬を使用してもかゆみが改善しない時は、皮膚科を受診しましょう。たとえばステロイド外用薬を使用している場合、一週間程度塗布してもかゆみが治まらなければ受診するべきです。
またがまんできないほどかゆみが強い時や、原因がわからない時も病院で診てもらいましょう。
頭皮のかゆみには、頭皮白癬など、セルフケアでの完治が難しい感染症が原因のこともあります。また、頭皮以外の全身にもかゆみ症状がでている場合は、別の病気が隠れている可能性もあります。いずれも早めに専門医に相談することをおすすめします。
タバコに含まれるニコチンには血管収縮作用があり、血行不良を引き起こします。血行不良は、頭皮のかゆみを悪化させる原因になることがあります。
かきむしると頭皮に傷がつき、炎症をおこすことがあります。その結果、髪の毛の成長が阻害されて、抜け毛が増えることがあります。
頭皮がかゆくなる原因やかゆみを軽減する方法について理解できたでしょうか。
頭皮のかゆみや炎症にはさまざまな原因があります。頭皮のかゆみが長く続くとそれだけでストレスになってしまう場合もあるでしょう。
まずは、現在おこなっているヘアケアや頭皮のかゆみにつながる生活をしてないか、今一度振り返ってみることが重要です。
頭皮の健康を保つために、この記事でご紹介した正しいシャンプーの方法や生活習慣のポイントを参考にしてみてください。
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監修者:伊藤 幹彦医師 |
内科・皮膚科医(日本外科学会認定外科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本医師会認定産業医)
東京医科大学八王子医療センターなどで心臓血管外科として勤務後、東京警察病院外科医長に。2010年に伊藤メディカルクリニックを開業し、心臓血管外科を専門とし、高血圧や糖尿病、AGAなど幅広く対応している。「みなさまの健康を生涯にわたってお守りするよきパートナーとして、わかりやすく、丁寧な診察に努める」がモットー。