お腹にはたくさんの臓器があるため、不調の原因もさまざまです。ここでは、お腹の調子が悪くなる病気について解説します。
便秘とは、便中の水分の減少によって便が硬くなったり、排便がスムーズにできなくなり、排便の回数が減ることです。また、便を排出するための臓器である大腸の動きが悪くなることでも便秘になる場合があります。
便秘になると下腹部に痛みを感じたり、残便感やお腹の張りなどが引き起こされます。
下痢や便秘などによるお腹の痛みや不快感が数週間から数カ月にわたってあらわれます。そのため、「電車やバスのようなトイレのない場所に長時間いられない」など日常生活に影響を及ぼす場合があります。
原因は明らかにされていませんが、近年の研究では、ストレスが大きく関わっているといわれています。
胃カメラ検査などでは異常がみられないものの、胃に不調が起こる疾患です。
胃もたれや胃痛、胸焼け、腹部の張りなどが多くみられます。
食道と胃の境目にある下部食道括約筋が弱まったり、肥満などが原因で腹圧が高まることによって、胃酸が食道へ逆流する病気です。
お腹の上の方に気持ち悪さを感じるようになり、げっぷや胸痛、喉の痛みや違和感、咳、食欲不振などの症状が現れます。
胃の粘膜がただれる病気です。ピロリ菌の感染やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の服用などが原因の一つとして考えられています。胃もたれや胸焼け、食欲不振、みぞおちの痛みなどの症状がみられます。
重症な場合には胃の粘膜から出血し、貧血症状、黒色便、吐血などの症状がみられるようになります。
胃の粘膜に生じるがんです。ピロリ菌の感染や喫煙、塩分の過剰摂取などがリスクを高めるとされています。
胃痛や胃もたれ、胸焼け、吐き気、黒色便、食欲不振などの症状がみられます。
虫垂炎とは、虫垂が便などで閉塞して炎症を起こしてしまう病気です。虫垂は、右下腹部にある細長い臓器で、盲腸からぶら下がっています。
初期症状は、みぞおちの痛みや吐き気、嘔吐などです。
お腹の不調が長引く場合、過敏性腸症候群(IBS)や腸内環境の乱れ、ストレス、慢性的な便秘・下痢、食物アレルギーなどが原因として考えられます。ガスが溜まる、腹痛を繰り返す、便通異常が続くなどの症状がある場合は注意が必要です。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の可能性も否定できません。自己判断せず、症状長引いている場合は消化器内科を受診しましょう。
お腹の不調が長期間続く時や悪化している場合は、医療機関を受診することが必要です。一方、軽度なお腹の不調の場合は、お腹に負担がかからない生活を送ることで改善されることがあります。
ここでは、お腹の調子が悪い時のセルフケアを中心に解説します。
特にお腹の不調には、食事が大きく関係しています。お腹がスッキリしないからといって食べないでいると、症状が悪化する場合もあります。 空腹の時間が長いことは、胃が荒れてしまう原因の一つです。胃に負担をかけないためには、寝る前や深夜の飲食も避けましょう。1日3食、なるべく規則正しく食べるのがポイントです。
肉類や揚げ物など脂質が多く含まれる食品は消化に時間がかかるため、なるべく控えることが大切です。また、胃の粘膜を刺激したり、胃酸の分泌を促したりするアルコールや辛い食べ物、炭酸飲料、コーヒーなどの刺激物のとりすぎにも注意しましょう。
さらに、生活習慣を整えることもお腹の調子を整えることにつながります。
胃や腸の機能は、交感神経と副交感神経で成り立つ「自律神経」が調整しています。ストレスや睡眠不足によって交感神経が優位になると、胃や腸の働きに異常が生じ、胸焼けや便秘などの症状が現れます。
お腹の調子を整えるには、睡眠や休息をしっかりとり、ストレスが溜まらない生活を心がけることが大切です。
また、運動不足も便通異常の原因になるため、ウォーキングやランニングなどの適度な運動も取り入れてください。
急性下痢の時には、体内から大量の水分が一気に失われてしまうため、まず無理をせず安静にし、失われた水分をしっかり補うことが重要です。飲み物は冷たいものより常温のほうが胃腸にやさしく、湯ざましやうすめのお茶などを少量ずつ、こまめにとりましょう。
さらに、食事は消化のよいものを選び、胃腸の負担を減らすよう心がけることが大切です。おかゆやすりおろしたりんご、やわらかく煮込んだ野菜スープなどは、体にやさしく必要な栄養もとれるため、体調回復を助けてくれます。
一方で、慢性下痢が続くような場合には、刺激の強い食べ物や脂っこいもの、冷たい飲み物などは腸に負担をかけるため避け、消化のよいものを中心に取り入れましょう。
現代人の生活には、腸の働きを弱め、便秘や下痢などのお腹の不調を引き起こす要因がたくさんあります。
次のチェックリストで、不調を引き起こす生活をしていないか確認してみましょう。
<お腹の不調を引き起こす生活チェックリスト>
1:肉類をよく食べる | |
2:インスタント食品やレトルト食品などの加工食品をよく食べる | |
3:野菜類、きのこ類、海藻類などに豊富に含まれる食物繊維をとらない | |
4:甘い食べものをよく食べる | |
5:食事の時間や回数が不規則である | |
6:睡眠時間が6時間以下である | |
7:よく夜更かしをする | |
8:運動不足である | |
9:真面目で完璧主義な性格である |
上記のチェックリストに当てはまるものが1~3個の人は「お腹の不調が出る予備軍」です。
4~6個の人は「お腹の不調が起きやすいため、早めの対策が必要な人」、7個以上の人は「腸の機能が低下しているため、今すぐ生活習慣の改善が必要な人」です。
お腹の調子を整えるためには、チェックをつけた項目を改善していくことが必要です。
腸の健康には、生活習慣が大きく関係しています。
ここでは、健康な腸を保つために大切な生活習慣の3つのポイントをご紹介します。これから腸内環境を整えたいという方や健康な腸を維持したいという方は参考にしてみてください。
腸内環境を整える食事で意識することは、大きく分けて二とおりあります。
一つめは、生きた善玉菌であるヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物などのビフィズス菌や乳酸菌を含むものを毎日とることです。
二つめは、腸内の善玉菌を増やすオリゴ糖や食物繊維を意識して接種していきましょう。食物繊維を多く含むのは、野菜類、果物類、豆類など。オリゴ糖は、大豆、たまねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナなどの食品にも多く含まれているため、日々の食事へ積極的に取り入れましょう。
便通を整えるには、身体を動かして腸に刺激を与える習慣をつけることも大切です。
ウォーキングやランニングなどの適度な運動をすることで腸内の便の動きを助けてくれます。便を送り出すためには腹筋の助けが必要なため、ウォーキングなど下半身の運動を増やすとよいでしょう。
普段エレベーターを使っている方は階段を使うようにしたり、一駅手前で電車を降りて歩いたりするなど、少しでも運動量を増やすよう工夫することが大切です。
お腹が冷えると、下痢になったり、お腹の不調が現れやすくなります。
近年は、どこでもエアコンが効いているため、夏でも冷え対策が必要です。冷えやすい服装を避けて、夏でも湯船に浸かって身体を温めるとよいでしょう。
1週間以上不調が続く場合は、感染症や腸の炎症、ストレス性の病気などが考えられます。特に下痢や血便、発熱をともなう時は早めに医療機関を受診してください。
慢性的な不調は、過敏性腸症候群(IBS)や腸内フローラの乱れ、食物アレルギー、ストレスが関係することがあります。内科や消化器内科での相談をおすすめします。
空腹時の腸の動きや、ガスが溜まっている場合によく起こります。消化に悪いものを控え、発酵食品や食物繊維で腸内環境を整えると改善されることがあります。
お腹の不調は食事や運動、睡眠など日々の生活習慣が大きく関係しています。まずは、自分の日々の生活習慣を見直すことからはじめましょう。
お腹の不調にはさまざまな原因があるため、問題ない場合もありますが、病気が隠れていることもあります。
生活習慣を改善してもお腹の痛みが強くなったり、1週間以上続いたりする場合は医療機関を受診するようにしましょう。
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監修者:五藤 良将医師 |
竹内内科小児科医院院長(東京都)
内科認定医、日本抗加齢医学会専門医、総合内科医(小児科・糖尿病内科・アレルギー科・老年内科・漢方診療対応)
防衛医科大学校を首席で卒業後、自衛隊関係病院などで臨床経験を積み、2019年竹内内科小児科医院院長に就任。2021年からは医療法人社団五良会理事長も務め、地域医療に貢献している。「患者さんに寄り添い、親しみやすく、融通のきく医療を提供すること」をモットーに、幼い頃から憧れてきた「赤ひげ先生」を理想とし、日々患者さんと向き合い続けている。