ダニに刺された時の症状は、室内のダニと屋外のダニで異なります。またダニ刺されとダニ以外の虫刺されとの判別が難しいケースが少なくありません。ここではダニ刺されとほかの虫刺されの見分け方やダニ刺されの特徴、症状などについて解説していきます。
基本的には室内で人を刺すダニはイエダニですが、ツメダニも偶発的に人を刺すことがあります。またノミやトコジラミなども人を刺すことがありますが、ダニ刺されとの見分けが難しいケースも少なくありません。
ダニ刺されとほかの虫刺されを見分けるためのポイントは、主に次の5つです。
1. 刺されやすい部位
2. 症状があらわれるまでの時間
3. 症状の持続期間
4. 刺された跡
5. 刺されやすい時間帯
イエダニは、脇腹、太ももの内側など、露出が少なく皮膚が柔らかい部位を好んで刺しますが、ツメダニは手足や太ももなど、露出している部位を刺すケースが多いです。ノミは、低い位置から飛び跳ねてくるため、足やすねなど地面に近い部分を刺す傾向にあります。
トコジラミは、手や足、首など露出している部分を刺します。
膝より上の露出していない部位を刺された場合、イエダニによる仕業の可能性が高いでしょう。
虫刺されによって起こるかゆみや腫れなどの症状は、アレルギー反応によるものです。アレルギー反応には、症状がすぐにあらわれる「即時反応」と、時間が経ってからあらわれる「遅延反応」にわかれます。
ツメダニに刺された場合は遅延反応が起きるため、症状は遅れてあらわれる傾向にあり、イエダニの場合、刺された直後から症状があらわれるケースが多いです。ただしダニ刺されによる症状は免疫反応によるものなので個人差が大きく、イエダニに刺された場合にも症状が遅れてあらわれるケースがあります。
ノミの場合、症状があらわれるまでに時間がかかるケースが多く、噛まれてから1~2日後にかゆみや赤い発疹があらわれるのが通常です。
トコジラミに関しては、一般的に初めて刺された時は、2~3日後に症状があらわれ、繰り返し刺されると、数時間後に症状があらわれるようになります。
ダニの場合、通常症状は1週間程度でひきますが、ノミに刺された場合1カ月ほど続くことが多いです。
トコジラミの場合は、1週間程度、強いかゆみが続きます。
ダニやノミに刺されると、赤い斑点が狭い範囲にあらわれます。どちらも水ぶくれをともなうケースが少なくありません。
トコジラミに刺された場合も赤い発疹ができ、同じように狭い範囲に複数の刺し跡が残ります。
ノミやトコジラミの場合、刺し跡の輪郭がぼやっとしていますが、ダニの場合、はっきりしていることが多いです。
ダニやトコジラミは夜行性で、主に夜間に活動するといわれています。他方でノミの活動時間は主に昼間です。夜間に、パジャマの中など、肌が露出していないカ所を刺された場合はダニが原因と考えられます。
イエダニに刺された部位は鮮やかに赤く腫れ上がり、水ぶくれになることがあります。
刺された跡はツメダニと似ていますが、イエダニに刺された場合直後から症状があらわれ、水ぶくれをともなうケースが多いのが特徴です。
以下のような特徴を持つ人はダニに刺されやすいです。
・ 肌が柔らかい
ダニは、口を刺して吸血するため、肌が柔らかい方は刺されやすいです。つまり大人よりも子どもが、男性よりも女性が狙われやすいといえます。
・ 汗をかきやすい
体温が高く汗をかきやすい人は、ダニに刺されやすい傾向にあります。ダニは高温多湿の環境を好むためです。運動後や厚い時期などは発汗も増えるため、普段あまり汗をかかない人も注意が必要です。
・ 飲酒習慣がある
ダニは二酸化炭素を感知して近づく習性があります。飲酒すると、体内でアルコールが代謝される過程で二酸化炭素が発生し、呼吸とともに放出されます。そのため、アルコールを日常的に摂取する人は、ダニに刺されやすいのです。
ダニ刺されによる腫れやかゆみなどの皮膚トラブルはアレルギー反応によるものですが、それとは別に「ダニアレルギー」による症状があらわれることもあります。
ダニアレルギーとは、ダニの死骸やフンに含まれるタンパク質が原因でおこるくしゃみ、鼻水、目のかゆみ、咳、喘息といった症状です。ダニアレルギーの主な原因になるヒョウヒダニはチリダニとも呼ばれ、室内のホコリに多く含まれるため、完全に防ぐのは困難です。
イエダニに刺された場合、感染症を発症することもあるためできるだけ刺されないようにすることが重要です。
種類 | 体長 | 特徴 | 症状 |
---|---|---|---|
ツメダニ | 0.3~1.0mm | 吸血はせず、普段は人を刺さないが、誤って人を刺して体液を吸うことがある | 刺された日の翌日以降に赤みや腫れ、かゆみなどが現れ、1週間程度続く |
イエダニ | 0.6~1.0mm | 人だけではなくネズミや鳥類に寄生し、吸血する | 刺された直後から赤みやかゆみなどが現れる。特に、お腹や脇の下、太ももなど皮膚が柔らかい部位が刺されやすい |
なおダニ刺されによる症状は免疫反応によるものであるため、個人差があります。そのため、必ずしも上記の症状が当てはまるとは限らない点に留意が必要です。
屋外にいて刺されることが多いのはマダニです。
体長は3~10mm程度と屋内のダニと比べて大きく、草むらや樹木などに生息します。主に野生動物に寄生するダニですが、人から吸血する場合もあります。
マダニは刺している間は感覚が鈍くなる物質を含む唾液を注入するため、刺されている途中にかゆみや痛みなどはありません。数日から10日ほどかけて吸血し、満腹になると自ら刺すのをやめます。
症状は必ずしもあらわれるとは限らず、刺すのをやめてから痛みやかゆみ、灼熱感などが起きる場合があります。マダニは、ライム病や重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、日本紅斑熱など、重症化すると死亡するケースもある感染症を媒介することがあるため、室内のダニ以上に注意しなければなりません。
屋内と屋外のどちらのダニも、刺された跡があせもに似ているため、対処法を間違えてしまう場合があります。
あせもは、汗を分泌する汗腺が大量の汗によってふさがれて炎症が起きる皮膚疾患のため、汗をかきやすいひじ裏やひざ裏、頭などにみられます。
ダニがこれらの部位を刺す場合もあるため、疑わしい場合は医師に相談しましょう。
室内のダニに刺されたら、かゆみや赤み、腫れの程度を確認しましょう。
腫れがそれほど強くなく、痛みもない場合は、ステロイド外用剤を使用することで炎症が鎮まり、腫れやかゆみなどを軽減できます。ステロイド外用剤には市販薬と処方薬があります。
また、患部をかき壊した場合は細菌感染のリスクがあるため、抗生物質を配合したステロイド外用剤を使用しましょう。
マダニが吸血している途中に発見した時は、自分で引き剥がそうとしてはいけません。無理に引っ張ると、マダニの一部が皮膚の内側に入ることで症状が悪化する可能性があるため医療機関を受診して適切な処置を受けることが大切です。
マダニが自ら刺すのをやめてから刺されたことに気づいた場合は、数週間は体調の変化に注意し、発熱や頭痛、筋肉痛など何らかの症状が認められた場合は医療機関を受診しましょう。
ダニに刺された場合、軽症なら市販薬で対応可能です。
炎症がある場合、ステロイド入りの塗り薬が効果的です。ベタメタゾン吉草酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、デキサメタゾン酢酸エステルなどが配合されているものをチョイスしましょう。
かゆみがある場合は、抗ヒスタミン剤や局所麻酔成分入りのかゆみ止めがおすすめ。
また、一刻も早くかゆみを抑えたい場合は、即効性のあるクロタミトンやリドカインが入っているものを選びましょう。
ただ、メントールやカンフル入りものは、スーッとした清涼感がありますが、刺激が強いため、子どもや顔に使用する際は注意が必要です。
炎症もかゆみも、市販薬で症状が収まらない場合は、早めに皮膚科を受診することが大切です。
室内のダニに刺された場合でも、大きく腫れてしまった、痛みが強い、腫れや炎症などの症状が広い範囲に出ている場合は医師に相談しましょう。
また、症状が長引く場合も細菌感染が起きている可能性があるため、医師に相談する必要があります。
まずは、ダニに刺されないように予防を意識することも大切です。
室内のダニに刺されないようにするためには、発生しやすい時期と場所を理解した上で対策することが重要です。
室内でダニが発生しやすい時期と場所について、詳しく見ていきましょう。
ダニは、高温多湿な環境を好みます。
もっとも発生しやすいのは、温度25℃前後で湿度75%前後の環境といわれています。そのため、6~9月ころの高温多湿の時期は、普段以上にダニ対策に力を入れることが大切です。
冬でも、加湿器を過剰に使用していたり、エアコンで室温を25度前後に維持していたりする場合は、ダニが発生しやすくなります。室温と湿度については、年中を通してこまめに確認しましょう。
ダニは、ホコリやカビ、食べカス、人のフケや垢などを餌に繁殖するため、布団やカーペットなどに発生しやすいとされています。
布団やカーペットをこまめに掃除しない場合、ダニのエサが大量にある状態が続くため、ダニにくり返し刺される可能性があります。
また、布製のソファやカーテンなど、布製品であればどこでもダニが発生しやすいといえます。
布団の中では「ツメダニ」に刺されることがあります。
ツメダニは布団やカーペットなど温度の高い環境を好み、ほかのダニや昆虫を餌にして増殖します。吸血性のイエダニに対して、ツメダニは血を吸うことはありません。刺し跡は赤く腫れ、強いかゆみが一週間ほど続きます。ツメダニに刺されやすいのは手足や太ももなど、露出している部分です。
ダニの発生を予防するためには、ダニが発生しにくい環境を整えることが重要です。
床材はフローリングを選び、カーペットの使用を避けましょう。ただし部屋の中にはダニのエサがあるため、繁殖を完全に防ぐことはできません。
少しでも繁殖しにくい環境にするために、天気の日には窓を開けて部屋を十分に換気し、湿気を取り除くことが大切です。
その上で、ダニのエサを除去するために、床の掃除を徹底しましょう。拭き掃除でホコリを十分に取り除き掃除機をかけて、なるべくホコリや人の垢、フケ、食べカスなどが床に落ちていない状態を維持します。この時、カーペットや畳は丁寧に掃除機をかける必要があります。
さらに、カーテンは定期的に洗濯する、ホコリが溜まりやすい場所を定期的に拭き掃除するなど、床だけではなく部屋全体の掃除もしっかり行うことで、徐々にダニが繁殖しにくくなっていきます。
ダニは1mm以下の大きさで肉眼ではほとんど見えません。
そのため、ダニに刺された時点で、その部屋全体に対策する必要があります。ダニが生息しているカーペットや畳、布団などにダニ駆除剤のスプレーを吹き付けることで駆除できます。
また、部屋のすみずみに潜むダニには、くん煙剤が効果的です。駆除成分を含む煙が部屋のすみずみにまで行き渡り、手が届かないところに生息するダニも駆除できます。ただし、ダニは死骸やフンによるアレルギーが懸念されるため、駆除剤を使用した後に掃除機をかけることが大切です。
また、布団はより重点的に対処する必要があります。ダニを駆除するには布団を高温にする必要があるため、天日干しをする方もいますが、ダニは死滅しません。布団のダニには、布団乾燥機が効果的です。
布団掃除機であれば、布団の中央部を50℃程度にまで上げられるため、ダニを死滅させることができます。
ダニに刺されの跡を治したい方は、「ヘパリン類似物質」や「アラントイン」が含まれている塗り薬を使用しましょう。
ヘパリン類似物質は保湿効果や抗炎症効果、血行促進効果を持ち、肌荒れや炎症など、皮膚疾患の治療に用いられます。
アラントインは、傷んだ皮膚や粘膜の修復を促進する作用のある成分です。
布団やマットレスの表面をめくって白い粉状のものを探しましょう。こうした白い粉はダニの死骸であることがほとんど。ダニが布団にいることになります。
ただしダニは非常に小さく、肉眼で確認するのは難しいため、専用の検査キットを使うのがおすすめです。
ダニに刺されると、刺された場所に赤みやかゆみがあらわれることがあります。
ダニに刺された場合は、ステロイド外用剤によって症状を軽減できます。
しかし、感染症を媒介する場合があるため、発熱や頭痛などの症状があらわれた際は医療機関を受診しましょう。
定期的な掃除や換気をするなど、なるべくダニに刺されないような環境を維持することを心がけましょう。
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監修者:高藤 円香医師 |
2013年防衛医科大学校を卒業後、大阪大学医学部附属病院や自衛隊阪神病院で研修ののち、皮膚科専門医を取得し、自衛隊阪神病院勤務に。皮膚科医として地域の方々の一般診療をメインに、アトピー性皮膚炎や乾癬などの診療にあたっており、執筆・監修などにも力を入れている。