食べすぎると、胃に処理しきれない量の食べ物がたまってしまい、胃もたれや胃の痛みといった不快な症状が現れやすくなります。なぜ胃に食べ物がたまるのかを理解するために、最初に胃腸の働きについて確認しましょう。
胃には伸縮性があります。食べ物が胃に入ると、天井部分がふくらんで食べ物を受け入れます。最初は胃の上部に食べ物がたまり、胃壁から胃液が分泌されるとともに胃が波打つように収縮します(ぜん動運動)。こうして食べ物と胃液が混ざり合い、粥状に消化されると、十二指腸に送られる仕組みです。
通常、食べたものが胃にとどまるのは2~3時間ほどですが、揚げ物やチョコレート、ケーキなど脂質の多い食事を大量に摂った場合は、消化に5~6時間ほどかかることもあります。消化に時間がかかって食べ物が胃に長時間留まっていると、消化不良の状態となって胃痛や胃もたれが起こり、「苦しい」「気持ち悪い」と感じます。また、消化しきれない食べ物は、胃の幽門部でふるい分けられます。十分に細かくない内容物は幽門を通過せず胃内に押し戻され、再び混和・粉砕されます。
夜遅くに食事をとる習慣は、体にさまざまな負担をかける可能性があります。特に就寝前に食べ過ぎると、消化活動が活発なまま眠りにつくことになり、体が休息モードに入る妨げとなります。結果として、胃腸に長時間食べ物が残り、胃もたれや睡眠の質の低下を引き起こすことがあります。
また、夜型の食事スタイルは、肥満や生活習慣病のリスクを高めるといわれています。食後に体を動かす時間が確保できないことから、糖や脂肪の代謝がうまく働かず、余分なエネルギーが体内に蓄積されやすくなります。特に脂質やタンパク質が多い食事は消化に時間がかかるため、寝る直前にとるのは避けたほうがよいでしょう。
どうしても空腹が気になる場合には、低脂肪のヨーグルトや温かいスープ、カット野菜など、胃に負担をかけにくい軽めの食べ物を選ぶようにすると安心です。また、夜の食べ過ぎを防ぐためには、ストレスをため込まずにリラックスできる習慣を持つことも大切です。夜遅くの食事を見直すだけでも、翌朝の体の軽さや体調の安定を実感しやすくなります。
食べ過ぎには、①甘い物や脂質を多く含む物を食べたときの快感や満足感、②ストレスによって食欲を抑えられなくなる、③早食いなどが関係しています。
甘いお菓子や揚げ物など、糖質や脂質を多く含む食べ物を口にすると、脳内でドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌が促されます。これによって脳内で快感や満足感が得られることで「もっとほしい」という欲求が生まれます。その結果、食べ過ぎにつながります。
食事制限や過労、人間関係のトラブルなどによってストレスが加わると、身体の機能に働きかけるコルチゾールというホルモンや神経伝達物質のノルアドレナリンなどが増加します。その一方で、食欲を抑える働きのあるセロトニンの分泌は減少してしまうため、結果的に食欲のコントロールが難しくなり、食べ過ぎにつながります。
早食いによって満腹感を得られないために食べ過ぎにつながります。食事を摂ると血液中のブドウ糖の濃度が上昇し、満腹感が生じます。しかし、ブドウ糖の濃度が上昇するには時間がかかるため、早食いすると十分に食べたのに満腹感を得られず、食べ過ぎてしまうのです。
食べ過ぎによって気分が悪くなったときは、無理に我慢せず、次のように対処しましょう。
ガムを噛むと唾液分泌が増え、食道へ逆流した胃酸を洗い流し、中和を助けます。その結果、胸やけや違和感が和らぐことがあります。胃酸過多による胸焼けや胃もたれが起こりにくくなるのです。
さらに、噛む動作にはリラックス効果があり、ストレスをやわらげることで胃の緊張を軽減することも期待できます。ストレスは胃の働きを低下させることで胃もたれを引き起こしやすくするため、ガムを噛む行為によって、さまざまな面から食後の不快感を軽減できます。ただし、糖分の多いガムは避け、できるだけシュガーレスのものを選びましょう。
消化薬、胃粘膜保護薬、総合胃腸薬は、食べ過ぎによる不快感を和らげるうえで効果的です。
消化薬は胃腸の働きを助けて食べ物の消化を促進し、胃粘膜保護薬は胃の粘膜を保護して胃酸による刺激から胃を守ります。
総合胃腸薬は、これら消化の促進と胃の粘膜保護を総合的にサポートします。胃の働きを整え、食べ過ぎによる胸焼けや胃痛などの症状を緩和します。
いずれも使用する際は、用法・用量を守るとともに、必要に応じて医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
消化のよい食べ物をとることで、胃腸への負担を減らすことができます。おかゆやうどんはやわらかくて消化が早く、胃にやさしい食品です。卵や鶏ささみ肉、白身魚は高たんぱくでありながら消化がよいため、胃に負担をかけずに栄養を補給できます。バナナや豆腐も消化がよく、胃腸に優しい食材です。
たとえば、食べ過ぎた翌日には、おかゆと鶏ささみのスープを摂ることで胃腸を休ませつつ栄養をバランスよく摂取できます。
食べ過ぎた後に気分が悪くなったときは、無理に動き回るよりも、体に負担をかけない姿勢で休むことが大切です。特に寝るときの体勢を工夫することで、胃の働きをサポートし、不快感の軽減につながります。
胃の構造上、消化された食べ物は右側へと流れていくため、体の右側を下にして横向きに寝ると、胃から十二指腸への移動がスムーズになります。ただし、右側ではなく左側を下にした横向き(左側臥位)のほうが食道への逆流を抑えやすくなるため、胸やけや逆流感が強い場合は左側臥位のほうが適しています。
また、仰向けで寝てしまうと、食べ物が胃にとどまりやすく、胃もたれや不快感が続く原因となるので避けましょう。
人によっては「瀑状胃(ばくじょうい)」という胃の形をしている場合があり、これは食べ物が胃の上部にたまりやすく、消化に時間がかかる傾向があります。このような体質の人は、最初に左側を下にして横向きに寝ると、胃の上部にたまった内容物が下に流れやすくなり、その後、うつ伏せ、右側を下にした順で体勢を変えることで、胃の消化と排出をスムーズに促すことができます。
食べ過ぎた翌日以降も胃腸の不快感が続く場合は、まず消化器への負担を減らすことを意識しましょう。水分をしっかりと補給し、脂っこい料理やアルコール、カフェインなど刺激の強いものは控えるようにします。食事は消化のよいものを選び、胃腸を休ませることが大切です。
次に、十分な休息を取り、ストレスを軽減するためにリラクゼーションを取り入れることが大切です。
食べ過ぎによる不快な症状が繰り返し起こる場合や長期にわたる場合は、食べ過ぎとは異なる原因が隠れていないか疑う必要があります。たとえばピロリ菌感染や慢性胃炎、胃潰瘍などの可能性があるため、医師に相談することをおすすめします。特に、ピロリ菌に感染している場合、放置すると胃潰瘍や胃がんのリスクが高まるため、長期間続く不快感は放置しないことが大切です。
まずおすすめしたいのは、カロリーをやや控えめにしたうえで満足感のある食事です。豆乳と小松菜で作るスムージーは、たんぱく質やビタミン、ミネラルがバランスよく含まれており、余計な脂質や糖質を抑えつつ栄養補給ができます。温野菜サラダにツナやバゲットを添えたメニューも、胃に優しく、噛むことで満足感が得やすくなります。炭水化物・脂質・たんぱく質の三大栄養素をほどよく摂れる点もメリットです。
さらに、胃腸への負担を減らすためには、消化のよい食品を選ぶことが重要です。おかゆや雑炊、うどんなどは胃の中での分解がスムーズで、少量でも体が温まり満足感を得やすくなります。湯豆腐や温泉卵など、脂質の少ないたんぱく源を組み合わせることで、栄養の偏りを防ぎながら胃腸をいたわることができます。
食べ過ぎによって起こる胃もたれや胃痛は、場合によっては数日間続くこともあります。こうした不調は日常生活の妨げになるため、あらかじめ食べ過ぎを防ぐ工夫を取り入れておくことが大切です。次のような方法で食べ過ぎを予防することが大切です。
食べ過ぎを防ぐ基本として、食事中によく噛むことが挙げられます。血液中のブドウ糖の濃度が上がって満腹感を得られるまでには時間がかかるため、噛む回数を増やすことで早食いを防ぐことで満腹感を得やすくなります。一口ごとに30回以上噛むことを意識し、ゆっくりと食事を楽しむ習慣をつけるとよいでしょう。これにより、食べ過ぎを自然と抑えられるようになります。
食事の最初に野菜をとることで、満腹感が得られやすくなり、結果的に食べ過ぎを防ぐことができます。野菜は食物繊維が豊富で、先に食べることで消化・吸収の速度が緩やかになります。特に、食物繊維の多いサラダや小鉢を選び、最初に食べる習慣をつけるとよいでしょう。主菜や炭水化物の摂取量を自然と抑えることができ、結果として食べ過ぎを防ぐことができます。
また、キュウリや大根、ごぼうなど歯ごたえのある野菜を選ぶと、よく噛むことで満腹感をより一層得やすくなります。
飲み会や外食では、つい食べ過ぎてしまうことが多いため、あらかじめ食事量をコントロールする意識を持つことが重要です。たとえば、サイドメニューは注文しない、両手の平におさまる程度の量に留めるなどのルールを決めることで、食べ過ぎを防止できます。また、塩味の濃い食事は食欲を増進させるため、あっさりとしたメニューを選ぶように心がけましょう。
たまの飲み会や外食だからといって食べ過ぎないように、食事量を調整するメリットや食べ過ぎるデメリットを思い浮かべてモチベーションを保つことも大切です。
食べ過ぎは、一時的な胃もたれや胃痛を引き起こすだけでなく、長期的には生活習慣病のリスクも高める可能性があります。食べ過ぎを防ぐためには、毎日の食事習慣を見直し、実践することが大切です。よく噛んで食べる、食事の最初に野菜を摂る、飲み会や外食の際に食事量を少なめに設定するなどの対策を取り入れることで、過剰なエネルギー摂取を抑え、肥満や消化器の不調を予防できます。食べ過ぎてしまったときは、ガムを噛んだり消化のよい物を食べたりして、胃腸が早く回復するように促しましょう。
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監修者:松澤 宗範医師 |
形成外科/再生医療/美容医療/予防医療/抗加齢医学
2014年3月近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 新宿院院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 院長 2024年7月 肌管理クリニック