おしりの黒ずみの原因はさまざまなものがありますが、典型的な原因は「摩擦」「栄養バランスの偏り」「乾燥による炎症」「角質の蓄積」「ホルモンバランスの変化」「日焼け」です。それぞれ解説していきます。
おしりの黒ずみの原因として、摩擦が挙げられます。
摩擦による刺激は、メラニン色素の過剰分泌につながります。メラニン色素がおしりの肌に沈着すると、黒ずみが起こることがあります。
おしりは体の中でも、下着や洋服による摩擦で黒ずみやすい部位です。
たとえば、衣類の摩擦刺激によって色素沈着するケースは少なくありません
特に締め付けの強い下着やジーンズなど、タイトな衣服はおしりの黒ずみを招く原因となりやすいといえます。
栄養バランスの偏りも、おしりの黒ずみの要因です。
ターンオーバーが正常なときには、メラニン色素は体の外に排出されます。
しかし偏った食生活で栄養バランスが乱れたり、睡眠時間が不足したりすると、肌のターンオーバーが滞り、メラニン色素が肌の内部に残ることがあります。結果的におしりの黒ずみが生じるわけです。
また、栄養の偏りはニキビや肌荒れなどの原因になりますが、こうした肌トラブルの跡に、黒ずみが残るケースもあります。
乾燥による炎症も、おしりの黒ずみの原因となります。
肌には、外部刺激から肌内部を守る「バリア機能」と呼ばれる機能が備わっています。バリア機能が低下すると、ちょっとした刺激でも、肌荒れなどの肌トラブルが生じることがあります。
そしてバリア機能が低下する要因のひとつが「乾燥」です。
肌が乾燥するとバリア機能の低下を招き、炎症を起こすようになります。それによりメラニン色素が増え、おしりの黒ずみとなるのです。
角質の蓄積も、おしりの黒ずみを招きます。
通常、古い角質は、肌のターンオーバーにより排出されるのですが、ターンオーバーが滞ると、肌に蓄積することがあります。角質が蓄積すると、メラニン色素が肌の表面に留まっておしりの黒ずみとしてあらわれることがあります。
デスクワークの方などは、長時間椅子に座り続けることは避けた方がよいでしょう。
椅子に座っておしりが圧迫された状態が長時間続くと肌のターンオーバーが乱れ、メラニン色素が蓄積されやすくなり、結果として色素沈着が起きやすくなるのです。
特に硬い素材のイスに長時間座ると、おしりに大きな負担がかかるため注意が必要です。
ホルモンバランスの変化も、おしりの黒ずみの原因となります。
ホルモンバランスの乱れは肌のターンオーバーに影響を及ぼし、メラニン色がスムーズに排出されなくなることで、黒ずみができやすくなります。
なかでも女性ホルモンである「エストロゲン」や「プロゲステロン」の変動は、メラニン色素の生成を促進し、色素沈着を引き起こす可能性があります。
特に思春期や妊娠期などのホルモンバランスが変化しやすい時期は、メラニン色素の沈着が起きやすくなり、おしりやデリケートゾーンの黒ずみが濃くなる傾向があるため注意が必要です。
日焼けもおしりの黒ずみの一因になります。おしりは衣類で覆われていますが、衣類や水着を通して紫外線が届くことがあります。
紫外線を浴びると、肌の色素細胞であるメラノサイトが活性化し、メラニン色素が大量に生成されます。メラニン色素は通常、肌のターンオーバーによって排出されますが、過剰に生成されると、ターンオーバーが追い付かなくなり、色素沈着を引き起こすわけです。
おしりの黒ずみは、セルフケアでの対策ができます。おすすめのセルフケア方法は「角質を取り除く」「摩擦の少ない衣服を着用する」「保湿する」「食生活を整える」「日焼け対策をする」です。それぞれ解説していきます。
角質が蓄積すると、おしりの黒ずみにつながるため、古い角質を取り除くケアが効果的です。ボディソープなどを使用して、洗い流すように角質を落としましょう。
まず入浴して肌をしっかりと温めた後、ごわつきが気になる場所を中心に、マッサージをしながら丁寧に馴染ませていきます。
最後に、やさしく洗い流して完了です。
この際、ナイロンタオルなどでゴシゴシと強く擦ってしまうと、かえって肌への刺激となり黒ずみが悪化する可能性があるため注意が必要です。
摩擦の少ない衣服を選び、おしりへの刺激を減らすことも有効です。
ショーツは縫い目のないシームレスタイプや肌触りのよいコットン素材のものを選びましょう。
また、下着だけでなく、タイトなジーンズなど締め付けの強い衣類にも注意しなければなりません。摩擦刺激を極力抑えるために、伸縮性が高くゆとりのあるものを着用することが重要です。
クリームやジェルなどを使った保湿ケアもよいでしょう。
保湿することでターンオーバーが促進され、黒ずみを予防できます。
美白成分(※)が配合されているクリームやジェルもおすすめです。
たとえば「トラネキサム酸」は刺激が少ないため、デリケートなおしりのケアにピッタリといえるでしょう。
効果的な保湿ケアのタイミングは、お風呂から出た直後です。入浴後は肌の皮脂量が少なくなっており、バリア機能が低下しているため肌内部の水分が蒸発しやすく、どんどん乾燥が進みます。入浴後10分以内を目安に、保湿しましょう。
※メラニンの生成を抑え、シミそばかすを防ぐ
おしりの黒ずみ対策には、栄養バランスの整った食事も重要です。
栄養が偏ると肌のターンオーバーが乱れ、シミや黒ずみができやすくなります。
特に積極的に摂取したい栄養素は、皮膚をつくる「タンパク質」や、タンパク質の合成や吸収をサポートする「ビタミン群」です。
タンパク質は、肉や大豆や卵、魚、乳製品などさまざまな食材に含まれます。ただし動物性タンパク質の過剰摂取は皮脂の分泌を促進し、おしりの黒ずみにつながる可能性があります。そのため肉や卵、魚といった動物性タンパク質類だけでなく、大豆やブロッコリー、納豆などの植物性タンパク質も摂取することが重要です。
成人女性で50g、成人男性で65gを目安に摂取しましょう。
ビタミン群のなかでも特に重要なのは、バリア機能の正常化する働きなどが期待できるビタミンA、メラニンの生成を抑える作用などが期待できるビタミンC、新陳代謝をサポートする働きなどが期待できるビタミンEです。
ビタミンAはかぼちゃや人参などの緑黄色野菜、レバー、卵などに豊富です。
ビタミンCはレモンなどに豊富に含まれ、ビタミンEはアーモンドやオリーブオイルなどに多く含まれます。
おしりはズボンに覆われていますが、紫外線は衣服を貫通するため、日焼け対策が必要です。水着になることの多い方は特に注意しましょう。
日焼け止めは水や汗で落ちてしまいますので、小まめに塗り直すのがポイントです。ウォータープルーフの日焼け止めを選ぶとよいでしょう。
またUVカットの服も効果的ですが、着用頻度や洗濯頻度によっては紫外線カット率が下がってしまうことがあります。そのため、日焼け止めと併用することが大切です。
おしりの黒ずみケアをする場合、選択肢としては「セルフケア」と「クリニックでの治療」があります。
セルフケアの場合、費用は抑えられます。しかし望むような効果が得られなかったり、症状の改善に時間もかかったりします。たとえばメラニン色素の合成を阻止する働きのある有効成分「ハイドロキノン」を配合したクリームなどは、ドラッグストアなどでも販売されており1000円程度から入手できますが、市販のものは化粧品なので濃度が低く、効果を実感できない可能性があります。高濃度のハイドロキノンを配合する医薬品は医師の処方が必要で、基本的にクリニックでしか手に入りません。
一方、クリニックでは、高い効果と即効性が期待できます。
たとえばクニックでは、薬剤を肌の奥に浸透させ、ターンオーバーを正常化する「ミラノリピール」など、専門的なケアを受けられます。
ただ、クリニックでのケアは費用が高くつきます。たとえばミラノリピールを受けるには30,000円程度必要です。高濃度のハイドロキノンを配合した医薬品は、保険適用外となるためクリニックによって差はありますが、3,000円程度かかります。さらに診察料も必要です。
セルフケアをしても改善しない場合は、皮膚科を受診しましょう。特に、黒ずみが大きくなったり、膨らんでいたり、かさかさしている場合などは、皮膚がんなどの病気の可能性もあるため、早めに受診することが重要です。
おしりの黒ずみは、摩擦や乾燥、角質の蓄積、栄養不足、ホルモンバランスの乱れ、紫外線などさまざまな要因で生じます。
セルフケアとしては、摩擦の少ない衣類の選択、保湿ケア、角質除去、栄養バランスのよい食事、日焼け対策などが効果的です。セルフケアでは改善しない場合や、黒ずみが広がる、膨らむ、かさつくといった症状がみられるときは、皮膚がんなどの疾患が隠れている可能性もありますから、早めに皮膚科を受診することが大切です。
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監修者:松澤 宗範医師 |
形成外科/再生医療/美容医療/予防医療/抗加齢医学
2014年3月近畿大学医学部医学科卒業 2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医 2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局 2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科 2017年4月 横浜市立市民病院形成外科 2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科 2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職 2019年2月 銀座美容外科クリニック 新宿院院長 2020年5月 青山メディカルクリニック 院長 2024年7月 肌管理クリニック