「食欲の秋」という言葉をよく耳にしますが、「秋になるとつい食べすぎてしまい太ってしまった」という経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。秋になるとなぜ食べ過ぎてしまうのかご存じの方はあまり多くないかもしれません。
この記事では、由来や秋に食欲が増す理由など、「食欲の秋」にまつわる知識をご紹介します。簡単にできる秋の食材を使ったおすすめレシピもご紹介しますので、知識を得ながら秋の味覚を楽しんでみてください。
「食欲の秋」という言葉があるほど、秋は1年の中で一番食欲が増す季節として知られています。実は、「食欲の秋」には明確な定義はありません。由来についても諸説あり、はっきりしていないのです。
ここでは、「食欲の秋」という言葉の起源として有力視されている説を2つご紹介します。
● "天高く馬肥ゆる秋"という言葉が起源となった説
● 多くの農作物にとって収穫時期だからという説
「天高く馬肥ゆる秋(てんたかくうまこゆるあき)」とは、"秋の空は澄み渡っていて、馬も肥えるくらい過ごしやすい季節"という意味です。
秋の快適な気候が食欲を増進させることを、馬を使って表現しています。
秋は田畑が収穫のピークを迎えることが由来となったという説もあります。
ここでは、秋に旬を迎える代表的な農作物の例を種類別にまとめてみました。合わせて、秋に旬を迎える魚介類についても見ていきましょう。
食物の種類 | 食物名 |
---|---|
穀物 | お米 |
野菜 | さつまいも、さといも、じゃがいも、ごぼう、かぼちゃ、れんこん、かぶ、大根、秋なす |
きのこ類 | まいたけ、しいたけ、しめじ、松茸 |
果実類 | りんご、ぶどう、梨、柿、みかん、栗、くるみ |
魚介類 | さんま、さば、いわし、かれい、秋鮭、かつお、うなぎ、カニ、牡蠣 |
夏の過酷な暑さを乗り越えて収穫を迎えた秋の食材は、ほかの季節に採れるものと比べて旨味が多いのが特徴です。
作物の豊富さ・クオリティの高さから「食欲の秋」と呼ばれるようになったとしても不思議ではないでしょう。
秋は食欲が増進するとお伝えしましたが、それはなぜなのでしょうか。ここからはその理由についてご紹介します。
気温が低くなると、人間の体は体温を保つため、生命活動を維持するエネルギーである「基礎代謝」がアップします。そのため、より多くのエネルギーを必要とするのです。
引用
基礎代謝が上がれば、それだけエネルギーを多く使ってしまうため、その分を補給しようとお腹がすくのでは?と言われています。
引用: 倉敷平成病院
秋は気温が下がっていく季節なので、冬に向けて栄養を蓄えるために食欲が増すという説もあるようです。
秋に食欲が増す理由として、「秋は食べ物がおいしい」からだと言われることが多いです。具体的には、以下のことが関係しているとされています。
● 夏の豊富な日差しを受けて存分に光合成を行い栄養豊富
● 秋は食材も冬に向けてエネルギーを蓄える
引用
秋になると、自然の食材も栄養分をたくさん蓄えるので人間にとっても美味しいと感じられる時期になっているからです。
引用:桑原医院
人間はもちろん動物、魚など多くの生き物が同じサイクルで生きているとは、神秘的ですね。
秋に食欲が増す原因の一つに、神経伝達物質「セロトニン」の分泌量との関係が挙げられます。セロトニンの別名は、「幸せホルモン」。実は、セロトニンには満腹感を感じさせ、食欲を抑制する作用があります。
おいしい物を食べると「もっと食べたい」と感じますが、これは脳内から「ドーパミン」が分泌されることが原因。セロトニンには、このドーパミンの働きを抑える作用があるため、食欲を抑制するわけです。
夏から秋になるにつれ日照時間はどんどん短くなっていきますが、日照時間が減ると日に当たる時間が短くなり、セロトニンの分泌量が減る傾向にあります。その結果、食欲が増す可能性があるのです。
参照:新宿ストレスクリニック
ついつい食べたくなるおいしそうな食材がたくさんある秋。食欲に勝つのはなかなか大変ですが、食べ過ぎには十分注意してください。
明確な定義はありませんが、「食欲の秋」が指すのは10月と11月であることが一般的です。つまり、「残暑が去り本格的な秋を迎えてから本格的な冬に入る前の期間」だと言えるでしょう。季節だけで言えば9月も秋に含まれますが、「食欲の秋」という意味での秋とは、より"秋らしい"時期を指すようです。
「食欲の秋」以外にも「〇〇の秋」という言葉はいくつかあります。「女心と秋の空」「秋茄子は嫁に食わすな」となど、秋はことわざなどにも多く用いられる言葉です。
数ある秋関連の言葉の中から、ここでは「食欲の秋」以外の「〇〇の秋」の由来や豆知識をご紹介します。
日本で「読書の秋」が広まったきっかけは、夏目漱石が小説『三四郎』に書いた「燈火親しむべし」という言葉だという説があります。この言葉は、8〜9世紀に中国で活躍した詩人・韓愈の誌の一節「涼しい風が吹く秋になって、ようやく灯火の下で読書を楽しめる」が由来です。
夏目漱石から広まりはじめた「読書の秋」という考え方は、戦後に出版社や書店、図書館などの団体が協力して「読書週間」を毎年秋に催してきたことによりすっかり定着しました。
「スポーツの秋」の明確な由来は不明ですが、有力とされている説は以下の2つです。
1、 東京オリンピック開会式の日にちなんで
2、 秋の気候がスポーツに適している
1つ目は、1964年の東京オリンピック開会式が開催された10月10日(法改正により現在は10月の第2月曜日)「体育の日」を由来とする説です。
2つ目は、1つ目の由来となった東京オリンピックの開会式日程が、調査結果をもとに晴れる確率が高い日を選んで決められたことから、以後多くのスポーツイベントが晴天の可能性が高いとされる9月や10月に行われ、「スポーツの秋」が定着していったとする説です。
「芸術の秋」も、主に2つの説が有力とされています。
1、 雑誌『新潮』が「美術の秋」という言葉を用いた
2、 秋に多くの美術展が開催される
1つ目は、新潮社が1918年に雑誌『新潮』の中で「美術の秋」という言葉を使ったことから「芸術の秋」が生まれたという説です。
2つ目は、二科展、日展、院展など絵画・彫刻・工芸品などの芸術作品の大きな展覧会の開催が秋に集中していることです。秋の過ごしやすい気候は芸術を楽しむのにも適していると考えられています。
「食欲の秋」の由来として、秋にはおいしい食材が豊富だからとお伝えしましたが、具体的にどんな食材があるのでしょうか。ここでは、代表的な秋の食べ物をご紹介します。
秋の定番として思い浮かぶのは、以下のような食材です。
● 栗
● サツマイモ
● きのこ類
● 秋刀魚(さんま)
● 梨
これらの食材を使ったおすすめメニューやレシピをご紹介しますので、ぜひ献立の参考にしてください。
栗を使った料理として有名なものは、以下の通りです。
● 栗ご飯
● 栗きんとん
● 栗の甘露煮
今回は、その中でも手軽でおいしい栗ご飯のレシピをご紹介します。
むき栗200g、米2合、いりごま(黒)適量
(A)醤油小さじ1、料理酒大さじ1、塩小さじ3/4
1. お米は洗ってザルに上げ、20分ほど水を切っておきます。
2. 炊飯器に1を入れて2合の目盛りまで水を入れます。
3. 炊飯器の水を大さじ1分減らし、(A)の調味料を入れてよく混ぜてください。
4. 器によそってお好みでいりごまをふったら完成です。
調理時間目安:10分(水切り・炊飯時間は除く)
サツマイモといえば、濃厚な甘みを生かしたレシピが豊富です。例えば、以下のようなレシピが挙げられます。
● サツマイモご飯
● サツマイモの甘煮
● サツマイモのポタージュ
今回は数あるサツマイモ料理の中から、サツマイモの甘煮のレシピをご紹介します。
サツマイモ1本
(A)みりん大さじ2.5、砂糖大さじ1、醤油小さじ1、水200ml
1. サツマイモはよく洗って1.5cm程度の輪切りにしたら、水にさらしてアクを抜きます。
2. 鍋にサツマイモを重ならないように並べ、(A)を入れて落しぶたをして中火で7〜8分煮込みます。
3. サツマイモが柔らかくなったら完成です。
調理時間目安:30分(アク抜き時間は除く)
旨味も栄養もたっぷりなきのこも秋を代表する食材です。魅力的なきのこ料理はたくさんあります。
● きのこのリゾット
● きのこハンバーグ
● きのこのバターソテー
ここでは、きのこのおいしさを存分に味わえる、きのこのバターソテーのレシピをご紹介します。
しめじ、えのき、えりんぎ、しいたけなどお好みのきのこを組み合わせて300g程度、にんにく1片、バター10g、オリーブオイル大さじ1、料理酒大さじ1、醤油小さじ1、塩コョウ小さじ1/3、バター10g
1. きのこは食べやすい大きさに切り、にんにくはみじん切りにします。
2. フライパンにオリーブオイルとみじん切りにしたにんにくを入れて中火で熱します。
3. にんにくの香りが立ってきたらきのこを入れて炒めてください。
4. きのこに火が通りしんなりしたら料理酒を加えて水分がなくなるまで炒めます。
5. バター、塩コショウ、醤油を加えて味をなじませたら完成です。
調理時間目安:15分
★ワンポイントアドバイス★
きのこは冷凍すると旨味がアップします。買ってきたら小分けにして冷凍しておけば便利においしくいただけます。
秋の味覚といえば秋刀魚を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。例えば、以下のような秋刀魚料理があります。
● 秋刀魚の塩焼き
● 秋刀魚のかば焼き
● 秋刀魚のおろし煮
今回は、秋刀魚のよさを引き立てる料理の中から、秋刀魚の塩焼きのレシピをご紹介します。
さんま2尾、塩適量、醤油適量、大根おろし適量、すだち1個
1. さんまはうろこを取ってやさしく洗い、水気を拭き取っておきます。
2. 両面に塩をふって片面5〜7分ずつ焼きます。 ※両面グリルの場合は裏返さずそのまま10分程度焼いてください。
3. 焼き上がったら器に盛り付け、大根おろしと醤油をかけます。すだちを添えたら完成です
調理時間目安:20分
気温が下がりはじめるとスーパーに並ぶ梨。秋の果物狩りの定番でもあります。ジューシーでさっぱりした甘みで扱いやすく、幅広い楽しみ方ができるのが特徴です。
● 梨のコンポート
● 梨の生ハム巻き
● 梨の豚肉巻き
梨は、デザートだけでなくおかずにも使える食材です。今回は、ワインとの相性抜群な前菜・梨の生ハム巻きのレシピをご紹介します。
梨1個、生ハム8枚、ベビーリーフ適量、オリーブオイル適量、ブラックペッパー少々
1. 梨は皮を剥いて8等分に切ります。
2. 梨1切れに1枚ずつ生ハムを巻きつけていきます。
3. 生ハムを巻き終わった梨をベビーリーフと器に盛り付けてください。
4. オリーブオイルをかけてブラックペッパーを振れば完成です。
調理時間目安:5分
今回は、「食欲の秋」について意外と知られていない由来や食欲が増す理由、おすすめのレシピなどをご紹介しました。最後に要点をまとめておきましょう。
● "天高く馬肥ゆる秋"という言葉が起源となった説
● 多くの農作物にとって収穫時期だからという説
● 冬への蓄え
● おいしい食材が多い
● セロトニンなどホルモンとの関係
● 栗・・・栗ご飯
● サツマイモ・・・サツマイモの甘露煮
● きのこ類・・・きのこのバターソテー
● 秋刀魚(さんま)・・・秋刀魚の塩焼き
● 梨・・・梨の生ハム巻き
秋にはおいしい食材が勢ぞろいしますので、食べ過ぎには注意しつつ、ぜひ「食欲の秋」を楽しんでみてはいかがでしょうか。