ビタミンDは骨の健康に欠かせない重要な栄養素です。食事からの摂取のほか、日光浴により体内で作り出すことができるのが特徴です。
本記事では、ビタミンDの効果や日光浴で生成する場合の注意点・ポイントなどをご紹介します。少し意識するだけで日常にできますので、手軽に新たな健康習慣として取り入れてみてください。
丈夫な骨づくりや免疫アップなど、私たちの健康に必要不可欠なビタミンDは、食事からの摂取以外に日光浴から得られる栄養素です。
公益財団法人骨粗鬆症財団のページにも、以下の記載があります。
引用
ビタミンDはカルシウムの吸収をよくするために、骨をつくるうえで欠かせない成分ですが、食事からだけではなく、日光浴により皮膚でもつくられます。
ここで注意したいのは、どんなに日当たりがよくても窓越しでは効果を得るのが難しいことです。先ほどの骨粗鬆症財団のページにも以下の記載があります。
引用
またガラスは紫外線をあまり通さないため、窓越しの日光浴ではあまり効果は望めません。一日中家の中にこもりきりの人は、食事からじゅうぶんなビタミンDをとらないと不足してしまいます。
そのほか、ビタミンDには以下の効果があるといわれています。
脳内伝達物質セロトニンには精神を安定させる効果があり、分泌されるとやる気や活力が出て前向きな気持ちになれます。「幸せホルモン」とも呼ばれ、私たち人間には欠かせない物質。不足するとうつ、不眠、意欲低下などの症状を引き起こすことがあります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によると、ビタミンDの1日あたりの摂取目安量及び耐用上限量は以下の表の通りです。
◇ビタミンDの1日摂取目安量と耐用上限量
属性 | 目安量 | 耐用上限量 |
---|---|---|
成人 | 8.5µg | 100µg |
高齢者 | 8.5µg | 100µg |
小児 | 7.5µg | 25~50µg |
乳児 | 5µg | 25µg |
妊婦 | 8.5µg | 100µg |
授乳婦 | 8.5µg | 100µg |
参考: 厚生労働省
終戦直後に多く見られた「くる病」のような病気になる人はほとんどいませんが、潜在的なビタミンD欠乏症の人は少なくありません。
ビタミンD産生のためには皮膚に有害な作用を起こさない範囲で紫外線量を確保する必要がありますが、緯度や季節の影響を受けることに注意が必要です。さらに、コロナ渦で外出の機会が減ったことで、ますます不足の傾向にあるといわれています。
例えば、厚生労働省の「令和元年度国民健康・栄養調査」によると、ビタミンDの平均摂取量は20歳以上の男性で7.9㎍、女性で6.6㎍と、摂取目安量である10㎍を下回っています。このことからも、潜在的なビタミンD不足が裏付けられることがわかるでしょう。
ビタミンDはほかの栄養素と同じく食事から摂取することが可能です。具体的にどの食材がどのくらいのビタミンDを含むかについては、以下の表をご覧ください。
◇ビタミンDを含む食品
食品名 | ビタミンD含有量µg |
---|---|
サケ(1切れ/80g) | 25.6µg |
イワシ丸干し(1尾/30g) | 15.0 µg |
サンマ(1尾/正味100g) | 14.9 µg |
カレイ(小1尾/正味100g) | 13.0 µg |
ブリ(1切れ/80g) | 6.4 µg |
シラス干し(半乾燥品・大さじ2/10g) | 6.1 µg |
きくらげ(乾燥品・2枚/2g) | 1.7 µg |
干ししいたけ(2個/6g) | 0.8 µg |
参考: 公益財団法人 骨粗鬆症財団
ビタミンDは、野菜や穀物、豆、イモ類にはほとんど含まれていません。多く含まれているのは魚類やきのこ類です。また、ビタミンDは骨に欠かせないカルシウムの吸収率を高めるので、一緒に摂取することをおすすめします。
また、紫外線量が少ない冬はビタミンDが不足しがちなので、積極的にビタミンDを含む食品を摂取することが大切です。
ビタミンD 生成に必要な日光浴の目安時間は季節や場所、時間によって異なりますが、15~30 分程度です。成人の1日のビタミンD摂取量の指標である5.5μgを生成する場合の具体的なデータを以下に示しますので、参考にしてください。
表:5.5 μgのビタミンDを生成するのに必要な、各地・各時刻での日光照射時間(雲のない晴天日と仮定)
7月 | 12月 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
9時 | 12時 | 15時 | 9時 | 12時 | 15時 | |
札幌 | 7.4分 | 4.6分 | 13.3分 | 497.4分 | 76.4分 | >2741.7分 |
つくば | 5.9分 | 3.5分 | 10.1分 | 106.0分 | 22.4分 | >271.3分 |
那覇 | 8.8分 | 2.9分 | 5.3分 | 78.0分 | 7.5分 | >17.0分 |
引用: 国立環境研究所
ある程度の紫外線量を確保できないと日光浴時間に対して生成されるビタミンD量が少なくなりますが、だからといって真夏の日中に日の光を浴びるのはおすすめできません。紫外線が非常に強くなる時間帯は、日焼けによるリスクが高まるので注意が必要です。
ビタミンDを作ってくれる紫外線ですが、広く知られているように害もあることに注意が必要です。急性障害の赤くなる日焼けサンバーンや黒くなるサンタンのほか、シミ・シワ、皮膚がん、白内障、免疫機能の低下などの慢性障害を引き起こす可能性があります。
ただし、有害性を極力排除することは可能です。
MED※1を超えない程度に紫外線を照射することによって、極力その有害性を排除し、屋外での活動によって適切にビタミンDを生成することができる
※1 MEDとは「最小紅斑紫外線量(Minimal Erythema Dose)」といい、皮膚に紅斑を生じさせる紫外線量の最小値のことです。MEDを超える量の紫外線は、皮膚に慢性障害を引き起こします。
下記サイトにて当日の観測結果に基づくビタミンD生成量とMEDの値をほぼリアルタイムで確認できます。北海道から沖縄まで12の観測局のデータを参考に、平均的な日本人のスキンタイプ(紫外線に対する肌の反応、6種類に分けられる)に日光を10分間照射した場合のビタミンD生成量が示されていますので、ぜひご覧ください。
リンク: 地球環境研究センター
ここまで、ビタミンD生成は日光浴によって行われること、日差しの強さによって一定時間あたりの生成量が変動することを説明してきました。次に、具体的にどんな浴び方がおすすめなのか、よくある質問への回答の形でご紹介します。
窓から入る紫外線でも日焼けするといわれていますが、それはUBAの話。ビタミンDを生成するUVBはガラスを透過しません。そのため、ビタミンDを得ることが目的の日光浴は窓越しではなく直接行うのが賢明です。網戸であれば紫外線を遮断しないので、屋内でビタミンDのための日光浴をしたい場合は窓ガラスを開けて網戸越しに行ってください。
手のひらや足の裏はメラニン色素が少なくあまり日焼けをしない部位ですが、ビタミンD生成においてはほかの部位に劣りません。窓から手だけ出して太陽に向けるだけでも十分です。体勢がきつくなければ足の裏でも効果が得られます。日焼けを気にして手のひらでの日光浴を行う場合は、身体や顔に塗った日焼け止めの残存に注意しましょう。手のひらに日焼け止めが残っていると十分な効果が得られなくなります。
服を着ていてほとんど肌の露出がなくても、手のひらを太陽に向けるなど、どこか直接日光を当てられれば効果は得られます。しかし、当然ながら長袖よりは半袖、長ズボンよりは半ズボンの方が紫外線に当たる面積が多く、より効率的にビタミンD生成が行われることは覚えておいてください。
日焼け止めが防ぐ紫外線の波長と、ビタミンDを生成する紫外線の波長はほとんど同じ、そのため、日焼け止めを使ってしまうと日光浴によるビタミンD生成効果が大幅に減少してしまうのです。環境省が2020年3月に発行した『紫外線環境保健マニュアル2020』によると、SPF30の日焼け止めの使用でビタミンD生成量が5%以下になるとされています。
散歩や身体を動かすレジャーなどと日光浴を組み合わせれば、より健康の維持・増進に役立ちます。ここからは、日常に取り入れやすく健康・美容に役立つ散歩・ランニングや気分転換になる行楽をご紹介します。
散歩には、以下のような嬉しい効果が期待できます。
● 生活リズムが整う
● 睡眠の質が高くなる
● 代謝がよくなる
● ストレスが軽減される
散歩より高負荷なランニングなら、ダイエットや身体づくりにより高い効果が見込めるでしょう。
時期や場所によって変化しますが、ビタミンDの生成に必要な大体30分程度の日光浴を30分間の散歩やランニングにすれば運動自体の健康効果とビタミンDによる健康効果の両方が得られます。
季節の行楽と日光浴を組み合わせれば、家族や友人など大切な人と楽しみつつ日光浴ができます。季節ごとの行楽の例は以下の通りです。
● 春の行楽
お花見、果物狩り、バーベキュー、ハイキング
● 夏の行楽
海水浴、川遊び、マリンスポーツ
● 秋の行楽
果物狩り、紅葉狩り、ハイキング
● 冬の行楽
スキー、雪遊び、スノートレッキング、ワカサギ釣り
季節が感じられる行楽の機会は自然に日光浴ができますし、ビタミンDの生成もできて一石二鳥です。ただし、紫外線の浴び過ぎにはご注意ください。
紫外線の量はゴールデンウィークを過ぎたころから7~8月がピーク。適度に紫外線を浴びることはビタミンDの生成のために大切ですが、過度な日焼けはシミ・シワの原因になるだけでなく、皮膚がんのリスクを上げてしまいます。また、皮膚だけでなく目の水晶体にも害を及ぼし、白内障の原因になるとも言われているので注意が必要です。
そのため、夏の行楽においては必ず日焼け止めを塗る、サングラスをかける、長袖の衣類をはおるなど、しっかりと紫外線対策を行いましょう。
行楽での日光浴がおすすめな人
● アクティブに活動したい人
● 行楽が好きな人
ビタミンDには、以下のような効果があります。
● 骨の代謝を促す(丈夫な骨を作る)
● 免疫力の向上、アレルギー症状の改善
● セロトニンの調節
ビタミンDは積極的に摂取したい栄養素ですが、日常の食事だけで必要量を摂取するのは難しいのが現実。そこでおすすめなのが、日光浴です。手のひらだけでも十分なビタミンDが得られるので、美肌のための日焼け対策とも両立できます。散歩などの運動やレジャーなどに取り入れると、ビタミンDの摂取に加え、健康効果も期待できるでしょう。
日常に日光浴を取り入れて、骨の健康に欠かせないビタミンDの十分な摂取を心がけてくださいね。