背中ニキビとは、背中にできるニキビのことであり、思春期のニキビとは異なり年齢に関係なく発生します。背中は皮脂腺が多く、皮膚が厚いため、毛穴に皮脂が詰まりやすく、ニキビができやすい部位です。また、自分では見えにくく、確認が難しい場所にあるため、気づかないうちに進行しやすいという厄介な特徴があります。
背中ニキビには、大きく分けて4つの種類があります。
・白ニキビ
初期段階のニキビで、毛穴に皮脂が詰まってできます。ターンオーバーの乱れや皮膚の肥厚化、皮脂の過剰分泌などにより毛穴が皮脂詰まりを起こし、その結果アクネ菌が増えることで白ニキビとなります。
・黒ニキビ
白ニキビが進行してできる、先端が黒くなった状態のニキビです。白ニキビの進行とともに毛穴が開き、白ニキビ内の皮脂が空気にさらされ酸化します。黒く見えるのは、酸化した皮脂が黒いためです。黒ニキビの段階までは、炎症をともないません。
・赤ニキビ
黒ニキビにアクネ菌が増殖し、炎症を起こしていくと赤ニキビとなります。アクネ菌は乾燥や紫外線による刺激、ホルモンバランスの乱れなどによって増殖し、炎症を起こします。
・黄ニキビ
赤ニキビがさらに悪化すると化膿し、アクネ菌のほか、黄色ブドウ球菌もニキビ内に入りこみ、肌の深部の「真皮層」が炎症を起こし、黄ニキビになります。強い炎症が起きているためにメラニンが多量に生成され、ニキビ跡ができる可能性が高くなります。
背中に発疹ができていても、背中ニキビではない場合があります。背中ニキビに似た主な症状は下記の3つです。
1:毛のう炎(毛包炎)
毛穴に赤みを帯びた発疹や、膿を含む盛り上がりができるものです。かゆみをともなうことが多く、多発するケースも珍しくありません。また、悪化するとしこりのようになり、圧痛や熱感を伴います。この状態をおでき(癤)と呼びます。さらに悪化して複数の毛包に炎症が起きた状態を「よう(癰)」といい、痛みが強くなったり発熱が起きたりします。
主な原因は、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌が毛穴に入り込み感染することです。黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌も常在菌ですが、バリア機能が低下すると毛穴のなかで繁殖し、炎症を起こすことがあります。
2:マラセチア毛包炎
毛のう炎の一種で、背中を中心に直径2~3mmの赤いボツボツができるものです。
マラセチアと呼ばれる真菌が、毛包内で増殖して炎症を起こすことが原因と考えられており、多くの場合、かゆみや痛みはともないません。ただし、症状が進むと膿むことがあります。
3:虫刺され(ダニ刺され)
ダニや蜂、蚊などの虫に刺されると、痛みやかゆみをともなう腫れができることがあります。
背中ニキビは、放置すると見た目や痛み、ニキビ跡などさまざまな問題を引き起こすため、早期に対処することが大切です。背中ニキビができたときの対処法について、詳しく見ていきましょう。
背中ニキビができたら、医療機関での受診を検討しましょう。以下の場合、市販薬では対処しきれない可能性があります。
・ニキビが痛みを伴う
・膿んでいる
・ニキビが広範囲に広がっている
医療機関では問診と視診を行い、ニキビの種類や重症度を評価します。場合によっては、細菌感染の有無を確認するために、膿の培養検査を行うこともあります。
治療法は、抗生物質の内服や外用薬が一般的です。細菌を殺菌し、炎症を抑える効果が期待できます。また、白ニキビの場合は針で穴をあけて内容物を取り除く場合もあります。
受診の際の注意点として、自己判断で市販薬を多用することは避けましょう。誤った治療は症状を悪化させる恐れがあります。また、医師の指示に従い、処方された薬を適切に使用することが大切です。
背中ニキビができた場合、悪化を防ぐとともに改善を促すためのセルフケアを行うことも効果的です。まず、シャワーを浴びる際には、石けんやボディソープを泡立てて優しく洗い、ゴシゴシこするのは避けましょう。洗い流す際には、しっかりとすすぎ、洗浄成分が肌に残らないようにします。
次に、保湿も重要です。乾燥が原因で皮脂の分泌が増えることがあるため、保湿成分を含むローションやクリームを使用して、肌の水分バランスを保つようにしましょう。背中は手が届きにくいため、スプレータイプの保湿剤を使うことも方法の1つです。
さらに、規則正しい生活習慣やバランスの取れた食事、十分な睡眠もニキビの改善や予防につながります。
このようなケアを行ったうえで、セルフケアとして市販薬の使用も検討しましょう。ただし、すでに皮膚科を受診しており、薬を処方されているのであれば、そちらを優先して使用することが大切です。また、薬を使い切った後に市販薬に切り替えるのであれば、事前に医師や薬剤師に相談し、自身に適した薬を選ぶ必要があります。
使用する市販薬としては、細菌の繁殖を抑え、炎症を鎮める抗菌成分や抗炎症成分が含まれている製品がよいでしょう。ただし、改善しなかったり悪化したりする場合は、医療機関を受診することが大切です。
背中ニキビは放置すると悪化する恐れがあるため、早期の対処が重要です。赤ニキビになると、腫れやかゆみ、痛みを伴うことがあります。また、繰り返される炎症によって皮膚が硬化し、しこりが形成されると、見た目の悩みがさらに大きくなるでしょう。 ニキビが悪化した場合、つぶしたり自分で治そうと試みたりするのは危険です。かえって治りが遅くなったり、跡に残りやすくなったりするリスクがあります。
背中ニキビが悪化した場合は、皮膚科を受診しましょう。皮膚科では、より効果的な治療が受けられます。
たとえば、ニキビに対して高い効果が確認されている「過酸化ベンゾイル」や「アダパレン」「クリンダマイシン」を処方してもらうこともできます。これらは、「尋常性痤瘡・酒皶治療(じんじょうせいざそう・しゅさ)ガイドライン 2023」で最も推奨度が高い「推奨度A」に該当する薬です。
また、皮膚科では生活面でのアドバイスも受けることができます。ニキビは生活習慣に起因するものもあるため、専門家による生活指導はニキビの改善・予防に役立つでしょう。
ここでは、背中ニキビの予防法や改善方法について、原因別に解説します。
背中ニキビは、原因の1つでもあるアクネ菌や皮脂、汗で増殖します。予防のためにも、吸汗性に優れた下着を着用し、背中をきちんと洗いましょう。
ただし、洗いすぎやゴシゴシと強く洗うことは厳禁です。肌を乾燥させ、ニキビを悪化させる可能性があります。1日1回を目安に、ボディソープをしっかりと泡立て、優しく洗うことが大切です。泡を用いることで、肌に負担をかけずに汚れを落とすことができます。
生活リズムの乱れや睡眠不足が、ニキビの原因になることも少なくありません。とくに睡眠不足は、ニキビに直結するといわれています。背中ニキビを予防するためにも、規則正しい生活を心がけ、良質な睡眠を確保しましょう。
オススメは、朝の日光を浴びることです。太陽の光を浴びると、概日リズムと呼ばれる体内時計がリセットされます。そうすることで、夜の就寝するころに睡眠ホルモンであるメラトニンがしっかりと分泌され、質の良い眠りを確保できます。
また、寝室の環境を整えることも大切です。快適な温度と湿度を保ち、静かで暗い環境を作ることで、リラックスして眠りに入ることができます。
食生活の乱れはニキビの発生に大きく影響するため、栄養バランスを意識した食事が大切です。例えば、ビタミンAやビタミンCは肌の健康をサポートし、ビタミンB群は皮脂の分泌を調整します。また、肌の修復や生成に必要なタンパク質も積極的に摂取することが推奨されます。
背中ニキビの予防のためにも、これらの栄養素を含む食品を、バランス良く食事にとり入れましょう。
近年では、腸内環境がニキビと関係していることが判明してきています。腸内環境が乱れると、有害物質が血液を介して全身に回ります。そのため結果的に肌にも負担がかかり、ニキビができやすくなってしまいます。腸内環境を整えるためにも、善玉菌を増やす食べ物も摂取するとよいでしょう。
身体がストレスを受けると皮脂の分泌量が増え、ニキビができやすくなります。
女性の場合は、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが肌の健康に深く関係しています。エストロゲンは、ストレスにより減少してしまいます。また、ストレスで交感神経が優位になると、毛穴が収縮するうえに免疫機能も低下するため、アクネ菌が活性化しやすくなり、ニキビを招きます。
適度に運動や気晴らしをして、なるべくストレスをため込まないようにしましょう。
乾燥も背中ニキビの原因となるため、肌を保湿することも大切です。
乾燥肌の対策には、スキンケアなど外からのケアも重要ですが、睡眠など内からのケアも欠かせません。
肌の水分を保つセラミドなどの「細胞間脂質」は、ターンオーバーの過程で作られます。そのターンオーバーの周期を一定に保つのが、成長ホルモンです。成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されるため、質の良い睡眠を確保することが肌の乾燥対策になるだけでなく、ニキビの対策にもなります。
関連記事:肌の乾燥対策におすすめの美容スキンケア方法を紹介!
最後に、背中のニキビ跡のケア方法や改善方法について紹介します。
炎症により毛細血管が壊されると、赤血球が皮膚の細胞間に漏れ出て赤く跡に残ることがあります。多くの場合は自然に消えますが、完全に消えるまでには長期間かかることもあります。ターンオーバーを促進し赤血球を排出する治療や皮膚の再生を促す治療が効果的です。
改善法の例
・医療機関でケミカルピーリングを受ける
炎症で作られたメラニンが、茶色いシミとなって肌に沈着することがあります。通常は時間の経過と共に薄くなりますが、市販薬でケアすることで消えるまでの期間の短縮も可能です。
改善法の例
・市販のビタミンC内服薬を飲む
・ハイドロキノンクリームを医療機関で処方してもらい塗る
肌の奥深くの組織がダメージを受けると、凸凹が残ることがあります。セルフケアでは改善が期待できないため、医療機関で治療を受けましょう。ただし、治療を受けても完全に消すことは困難です。
改善法の例
・医療機関でメディカルピーリングを受ける
・医療機関でレーザー治療を受ける
皮膚を作る繊維細胞が過剰生成され、赤く盛り上がった状態です。「肥厚性瘢痕」と呼ばれ、ケロイドと違い経過と共に薄くなります。
改善法の例
・医療機関でステロイド注射をうつ
・医療機関でレーザー治療を受ける
肥厚性瘢痕が広範囲に渡った状態です。痛みやかゆみを伴います。根本的な改善は期待できませんが、レーザー治療などで症状の緩和ができる場合があります。
改善法の例
・医療機関でステロイド注射をうつ
・医療機関でレーザー治療を受ける
背中ニキビは自分では気づきにくく、進行してしまいがちです。しかし、普段の生活習慣を見なおすことで、ある程度予防・改善をすることも可能です。
むやみに触れると治りが遅くなったり、跡に残りやすくなったりするため、なるべく触らないようにしてください。それでも悪化してしまった場合は、自分で対処せずに病院を受診することをオススメします。
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監修者:稲葉 岳也医師 |
専門:耳鼻咽喉科・皮膚科・アレルギー科
日本耳鼻咽喉科学会認定 耳鼻咽喉科専門医、日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
東京慈恵会医科大学卒業後、千葉大学大学院にて医学博士取得。
東京慈恵会医科大学附属病院、聖路加国際病院を経て、2004年にいなばクリニックを開業。皮膚科、美容皮膚科、形成外科、美容外科、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、アレルギー科を主体として、幅広い視点で総合的な診療を行う。レーザー機器を導入した医療を行っており、幅広い年齢層を対象としたホームドクターとして、地域密着の診療に尽力。