部屋が乾燥すると、さまざまな問題が発生します。例えば、寝ている間に喉が乾燥し、朝起きたら喉が痛くなっていたという経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。こういった悩みを解決するためには、ただ部屋の湿度を上げれば良いというわけではなく、適切な乾燥対策が必要です。この記事では、部屋の乾燥対策の正しい知識をご紹介します。
部屋の乾燥対策と聞いてまず浮かぶのが加湿器でしょう。 しかし、実は加湿器がなくても以下の方法で簡単に乾燥を防ぐことができます。
● 濡れタオルや洗濯物を干す・振る
● 霧吹きで水を空気中に含ませる
● 浴室のドアを開けておく
● 部屋でお湯を沸かす
● 水・お湯を容器に入れる
● 床・窓を水拭きする
● アロマディフューザーを活用する
● 植物を置く
濡れたタオルや洗濯物を室内に干したり振ったりするだけでも保湿効果が得られます。具体的な方法は以下のとおりです。
● 用意するもの:水に浸した後によく絞った清潔なバスタオル
● 枚数:6畳につき1~2枚
● 方法:タオルをハンガーにかけて自分の近くに置く
特に日中は、エアコンの吹き出し口の近くに置くと、部屋全体を加湿することができます。また、就寝前には枕元に置くことで、寝ている間の口や喉の渇きを防止できます。ただし、いずれの場合も以下の点には注意が必要です。
● 毎回清潔なタオルを使うこと
● 使用後のタオルは毎回洗濯すること
霧吹きを室内で使うことでも、乾燥を防ぐことができます。ただし、単に空中に向かって霧吹きを使うだけだと、細かい霧が空気中に漂ってしまうだけになるためあまり効果がありません。霧吹きを使って効果的に加湿するためには、以下の点がポイントです。
● 布製品であるカーテンやソファーなどに少し湿るくらい吹くこと
● 濡れていると感じる量は吹かず、湿っている程度に留めること
● 霧吹きの水は毎回交換して新しいものを使うこと
布製品が濡れるほどの水を吹いてしまうと、カビや雑菌の繁殖の原因となります。また、古い水を使いまわしてしまうと、水が腐ってしまいカビや雑菌の繁殖の原因となるため注意が必要です。
生活のなかで簡単にできる乾燥対策として、浴室のドアを開けておくという方法があります。
具体的には、浴槽のお湯を貯めたうえで、浴槽のフタや浴室のドアを開けておきます。こうすることで、浴槽内のお湯が蒸発し、乾燥を防ぐことが可能です。
注意点として、この方法では短時間で高い加湿効果を期待できる一方、浴室の近くの壁などにカビが繁殖するリスクがあります。そのため、ドアを開けている間は換気扇や扇風機を使い、湿度の高い空気が浴室回りに留まらないように注意しましょう。
コーヒーなどを飲むためにお湯を沸かすだけでも、乾燥対策になります。火力や水の量によって異なりますが、一般的にお湯は3分ほどで沸騰し、水蒸気になって湿度が高くなります。沸騰させる数分だけでも加湿の効果を得られるので、ぜひ実践してみましょう。
お湯を沸かす方法でより効率的に加湿するためには、電気ケトルやポットではなく、ヤカンを使うことがおすすめです。そのほか、鍋でお湯を沸かしたり、煮込み料理などの長時間蒸気が発生する料理を作ったりするのも効果的です。加湿のためだけに鍋でお湯を沸かす場合は、鍋のフタを開けてしばらく放置することで高い効果が得られます。
なお、ヤカンを使う場合には、蒸気量が多いため周囲が濡れたり、熱いお湯で火傷したりする危険があるので注意しましょう。また、水分がなくなるまで放置して空焚きしてしまわないようにしましょう。
水やお湯をコップなどの容器に入れて置くだけでも、容器の中の水分が蒸発するため、乾燥対策ができます。
寝室程度の広さであれば、水やお湯の入ったコップを枕元に置くことで十分な保湿効果を得られます。ただし、コップ程度だと広いリビングなどを保湿するだけの効果は得られません。この点、水の温度が高いほど湿度を高くする水蒸気量が増えるので、温かいお湯で加湿するのがおすすめです。
部屋の床がフローリングである場合、かたく絞った雑巾で水拭きすることで、室内を加湿することができます。
ただし、フローリングの材質によっては水拭き不可なものもあるので、事前に確認が必要です。水拭き不可の場合は、床ではなく窓やテーブルを水拭きしましょう。寝具近くの窓や床を拭くことで、寝ている間の乾燥をより効果的に防ぐことができます。
アロマディフューザーとは、精油やエッセンシャルオイル、フレグランスオイルなどを含んだアロマオイルを拡散させて香りを楽しむアイテムのことをいいます。アロマディフューザーには、香りを楽しむタイプと、香りを楽しめるだけでなく加湿機能も備えたタイプがあります。
加湿機能を備えたタイプは、アロマで香りを楽しみつつ、部屋の加湿もしてくれる優れものです。ただし、香りのみを楽しむタイプに比べるとアロマ効果は弱まってしまう傾向にあります。
観葉植物を室内に設置することでも乾燥対策が可能です。また、植物は、緑の葉に太陽の光を浴びることで、根から吸収した水と空中の二酸化炭素による光合成を行い、新鮮な酸素を作り出しています。これにより、乾燥対策だけでなく空気清浄効果も期待できます。
観葉植物を選ぶ際のポイントは、以下のとおりです。
● 置き場所で大きさを決める
日当たりや湿度、温度によって適した品種が変わるため、部屋のどこに置きたいのかを考えしましょう。また、部屋のサイズに合わせた大きさにすることもポイントです。テーブルに置ける小型のものから床置きの大型のものまで、配置も考慮しながら適切な大きさを選びましょう。
● てやすいものを選ぶ
観葉植物は生き物なので、手入れを怠ると枯れてしまいます。手入れの頻度が少なくて済む観葉植物を選びたい場合は、水やりの回数が少なくても枯れない品種がおすすめです。
部屋だけではなく、自分に対してできる乾燥対策もあります。部屋の乾燥対策とあわせて、以下のような方法を取り入れることもおすすめです。
● マスクする
● 全身の保湿ケアを行う
● コップ1杯分の飲み物をのむ
● 口呼吸をしないようにする
マスクは乾燥対策に有効です。マスクをすると、自分の息がマスク内にこもることで口の周りの湿度が高くなります。その湿った空気を吸うことで、鼻や喉の乾燥を防ぐことができるのです。
同じ理由で、唇や肌の乾燥が気になるときにマスクをすると、湿度を高く保つことで潤いを取り戻す効果があります。
乾燥対策には、以下のようなマスクがおすすめです。
● 布製マスク
乾燥対策をする際は、肌に優しい布製マスクを活用しましょう。化学繊維である不織布は、加工のしやすさが特徴です。そのため、立体構造マスクなど顔にフィットするマスクとして多く販売されており、花粉やウイルスなどの侵入を防ぐフィルター機能が優れています。一方で肌荒れやニキビの原因になることが多いため、乾燥対策のためには不織布よりも布製マスクの方が適しているのです。
● 天然素材の綿やシルクタイプの睡眠用マスク
シルクなどの天然素材でできた睡眠用マスクを活用するのもおすすめです。天然素材は保湿性に優れており、吸水性もあるため、口元の湿度を適度に保つことができます。
顔と比べると、身体の保湿にはあまり手をかけないという方は多いのではないでしょうか。しかし、毎日の食器洗いで洗剤などに触れている手や、衣類とこすれてしまいダメージを受けている腕や脚など、部位によっては顔以上に過酷な環境にさらされています。顔とあわせてしっかりと保湿ケアを行いましょう。
全身の保湿のためには、以下のような方法があります。
● 保湿クリームを使う
保湿クリームの中でも特におすすめなのは、尿素という成分が配合されたものです。尿素には、水分を保持する働きと硬くなった角質を柔らかくする働きがあります。角質が硬くなると保湿力が低下するため、より一層乾燥肌が進行してしまいます。乾燥肌を避けるためにも、保湿クリームを使って角質を潤いある状態に保つことが重要です。
● ぬるめのお湯で丁寧に洗う
湯船やシャワーの温度は、40度以下に設定するのがおすすめです。熱いお湯に浸かると、肌の保湿成分が流れ出て乾燥が進んでしまうので気をつけましょう。
就寝前に、コップ一杯の飲み物を飲みましょう。おすすめは水か白湯です。寝ている間に発汗作用で失われる水分をあらかじめ補給し、喉の乾燥を抑えることができます。また、朝起きた際にも同じくコップ一杯の飲み物を飲むのがおすすめです。
就寝前に適量の水を飲むことで、喉の乾燥を防ぐだけでなく、むくみの解消などの美容効果や、心筋梗塞・脳梗塞などの病気を防ぐ効果も期待できます。ただし、過度な水分摂取はむくみの原因となるだけでなく、身体に悪影響を及ぼすため気を付けましょう。
口呼吸をしないように意識することで、喉の乾燥を防ぐことができます。口呼吸は喉の乾燥以外にも、全身の不調や歯周病の発生など、さまざまな悪影響をもたらす可能性があります。
下にあてはまる場合、無意識のうちに口呼吸をしているかもしれません。
● 無意識のうちに口が開いている
● 口が乾きやすい
● 唇が乾燥しやすい
● 起床時に口の中が乾いている
● 起床時に喉が痛い
● 起床時に口臭がある
● いびきをかく
● 就寝中によだれが出ている
● 鼻が詰まっている
口呼吸は寝ている間に無意識にしてしまうこともあるため、治しづらい症状です。しかし、以下のグッズを活用することで寝ている間の口呼吸を防ぐことができます。
● ナイトミン鼻呼吸テープ
口に貼って寝るだけで口呼吸を予防し、鼻呼吸を促します。
● 舌用マウスピース
咥えることで、寝ている間の鼻呼吸を促します。
部屋・寝るときに喉が乾燥する原因は、春~夏にかけてと、秋~冬にかけての2パターンがあります。
◇春~夏にかけて部屋が乾燥する原因
● エアコンの使用
エアコンのクーラー機能は、室内の水分を室外に放出する際の気化熱で空気を冷やす仕組みです。そのため、冷房を点け続けることは室内の水分を奪い続けることにつながります。さらに、屋外の冷気が窓に伝わると結露が生じ、室内の空気中の水蒸気が窓について水滴になります。その結果、室内の空気の湿度が下がり乾燥につながるのです。
● 花粉症や風邪による鼻詰まり
春に喉が乾燥する原因は、花粉症や冬からの移り変わりの影響で風邪をひき、鼻詰まりを引き起こすことが主な理由です。自然と口呼吸に陥り、喉の乾燥が生じてしまいます。
◇秋~冬にかけて部屋が乾燥する原因
● 気圧の変化
秋は移動性高気圧の影響で空気が乾燥しやすくなります。具体的には、夏の間に日本付近を覆っていた高温多湿の太平洋高気圧の勢力が弱まり、大陸から移動性高気圧が日本付近を訪れるようになります。大陸からの移動性高気圧は水分が少なく空気が乾いているので、その影響で呼吸をするたびに喉が乾燥してしまいます。
● 暖房の利用
暖房は部屋の空気を暖めて温度を上昇させます。しかし、湿度は部屋の空気が低いときのままなので、温度の上昇とは逆に低下していまいます。その結果、空気の乾燥を引き起すのです。
なお、暖房による喉の乾燥は、乾燥した空気を吸い込むことによるものだけでなく、冷房病という病が原因の場合があります。これは、暖房が効いた部屋と寒い場所との温度差が原因で起こる病です。冷房病になると、自律神経の乱れにより、喉の乾燥による痛みだけではなく、肩こりやむくみ、睡眠不足も引き起こしてしまいます。
上記でも冷房病について触れましたが、喉が痛い場合、原因は乾燥だけではないかもしれません。喉が痛くなる原因としては、以下のようなケースも考えられます。
● ウイルスや細菌の感染
● 長時間しゃべり続けるなどの喉の酷使
● タバコや香辛料などによる喉への刺激
● 咽頭がん
● 声帯ポリープ
このように、喉が痛いときにはさまざまな原因が考えられますが、なかには病院などで受診したほうが良いケースもあります。以下のような場合は、できるだけ早く受診するのがおすすめです。
● 喉が腫れており、腫れている部分に膿があるとき
● 声がかれたまま改善しないとき
● 飲み込むときに強い痛みがあるとき
● 喉に違和感や異物感があるとき
● 痰に血が混じるとき
● 呼吸が苦しいとき
● 高熱があるとき
● 食べ物や飲み物を飲み込めないとき
● セルフケアをしてもよくならないとき
特に、喉の違和感や異物感、などの症状が表れた場合には、咽頭がんの可能性があります。風邪の症状とも似ているため発見が遅くなりがちですが、気づいたらできるだけ早く受診しましょう。
また、大声を出したり声を使いすぎたりすることで、声帯ポリープという病気が発生する可能性もあります。この場合も早めの受診がおすすめです。
加湿を行うことで得られるメリットとして、喉のケアや肌トラブルの防止など、身体の不調を改善する効果が挙げられます。また、壁や床材などは乾燥すると燃えやすくなるため、火事の予防にもつながります。
一方、加湿を行うことで発生するデメリットがあることも事実です。主なデメリットは以下のとおりです。
● カビやダニの発生につながる
部屋の湿度が高すぎる場合は、カビやダニの発生につながります。カビやダニは高温多湿を好むため、湿度を高いままにしておくと、家具や洋服にカビが生えてしまうリスクが高まるのです。また、カビの胞子を吸い込み肺の病気を発症することや、ダニによる肌のかゆみやアレルギー性鼻炎などを引き起こすことも考えられます。
● 疲れや身体の不調が出やすくなる
湿度が高いと、人は温度調整が難しくなり疲れやすくなります。湿度を高くしすぎると身体は冷えを引き起こし、老廃物や水分が体外に排出されにくくなり、その結果として身体のこりや頭痛が起こってしまうのです。また湿度が高いと汗が蒸発されず、熱が体内にこもってしまいます。最悪の場合は熱中症に発展するため、湿度の上げすぎには注意しましょう。
こういったデメリットは、室内を適切な湿度に保つことで解消できます。室内の適切な湿度は40〜60%といわれており、湿度が60%を超えると、カビやダニが発生してしまいます。こまめに換気などを挟み、湿度を上げすぎないようにしましょう。なお、40%以下だと喉が乾燥するだけではなく、風邪やインフルエンザを引き起こす原因であるウイルスが活発になってしまいます。
部屋の理想的な環湿度と温度は、夏季と冬季でそれぞれ以下のとおりです。
● 夏季
湿度(相対):40~60%
温度:24~27℃
● 冬季
湿度(相対):40~60%
温度:20~23℃
なお、上記で「湿度(相対)」とありますが、湿度にはこの「相対湿度」と、別の概念として「絶対湿度」というものがあります。それぞれの指標が示す内容は以下のとおりです。
● 相対湿度
一般的に天気予報などで聞かれる湿度50%は、相対湿度と呼ばれる数字です。空気中には気温ごとに水蒸気を含むことができる量の限界(飽和水蒸気量)が決まっており、その限界までのうち何%含んでいるかを示しています。つまり、相対湿度は空気中に含まれる水蒸気の割合を表しています。気温30℃と15℃の場合では、同じ相対湿度でも水蒸気量が変化するのです。
● 絶対湿度
絶対湿度とは、縦横高さ1メートルの空間に含まれる水蒸気の重さが何グラムかを示しています。つまり、絶対湿度は空気中に含まれる水蒸気の自体の量です。
和室や畳部屋で乾燥対策を講じる場合は、適切な湿度である40~60%に保つ際に注意が必要です。畳は吸湿性が高いため、和室は洋室ほど加湿しないように気を付けなければなりません。畳が湿度を吸いすぎてしまうと、結露が発生しカビや痛みの原因になってしまいます。カビなどを防ぐためには、部屋の湿度をこまめに確認しましょう。
この記事では、部屋の乾燥対策についてご紹介しました。部屋の乾燥は喉の痛みをはじめとする人体の不調を引き起こすため、対策を講じて40~60%に保つことが大切です。加湿器を使用しなくても、家にあるものや、少しの工夫で簡単に乾燥対策ができます。この記事を参考に、部屋の湿度を適切に保ち健康的な生活を送りましょう。