野菜がたくさん摂れて健康的なイメージの鍋。肌寒い季節になってくるとスーパーにも鍋つゆがたくさん売られ、そのあたたまるイメージから食べたくなることが多いのではないでしょうか。
本記事では、鍋にはどんな栄養があるのかを解説し、より健康的な鍋にするポイントをお伝えします。鍋を食べて、おいしく健康的な食生活を実現したい方はぜひ最後までお読みください。
野菜たっぷりで温まるイメージから、健康にいい食べ物と思われがちな鍋。美容目的やダイエット目的で取り入れようと考えている人も少なくないのではないでしょうか。
そんな健康的なイメージの鍋ですが、具体的にどんな点が健康にいいと言われているのか、気になりますよね。そこで、まずは鍋の健康にいい3つのポイントを確認しましょう。
まず、1つ目の健康にいいポイントは「野菜がたくさん食べられる」点です。量はもちろん、種類も1種類だけではなく数種類を摂取できるのも評価ポイントでしょう。
汁までいただけば、ビタミンB群やビタミンCなどの水溶性の栄養も摂取できます。ただし、塩分の過剰摂取には注意が必要です。詳しくは後述しますが、味付けを薄めにする、市販の素を使わず自作するなど、塩分を摂りすぎない工夫さえすれば、汁はシメや翌日の朝食などにアレンジして溶け出した栄養まで余すことなくいただきましょう。
水炊きならお味噌汁、醤油や塩ベースならスープにアレンジなど、翌日もおいしく食べる工夫をしてみてください。
鍋は具材が豊富であるため、バランスよく栄養を摂取しやすいのも健康にいいといわれるポイントです。
お肉や豆腐などのたんぱく質、野菜やきのこのビタミンやミネラルなど、バラエティ豊かな食材から、さまざまな栄養が摂取できるのはもちろん、日によって鍋の種類を変えれば、具材も変わり、同じ鍋料理でもいろんな味でさまざまな栄養が摂取できます。
長崎女子短期大学の古賀克彦教授の研究によると、最初に野菜やお肉などのたんぱく源を先に食べ、最後にシメとしてご飯や麺類などの炭水化物を食べる鍋の食べ方は、血糖値を上げにくい食べ方です。
また、きのこ類にも同様に、あとから食べる食べ物の糖質の吸収を緩やかにしてくれる食物繊維が含まれています。
さらに、先にゆっくり・しっかり噛んで野菜を食べることで、炭水化物を食べる前に満腹感を得て、食べすぎをセーブする効果も期待できるでしょう。
鍋は、にんにく・しょうが・にら・唐辛子などの体を温めて血流を促進し、冷えの緩和やむくみ予防、脂肪燃焼や代謝促進が期待できる食材も摂取しやすい料理です。ほかにも、豚肉や豆乳に含まれるビタミンB1も糖の代謝を高めてくれるなど、鍋に合う具材には代謝をアップさせてくれるものが多くあります。
鍋で体をあたため、代謝を高める食生活を実践しましょう。
鍋の健康にいいポイントをお伝えしましたが、大切なポイントを押さえていないと、せっかくの栄養を取り逃すことになりかねません。そこでここからは、健康にいい鍋の作り方のコツを紹介します。どんな鍋でも健康的に食べるポイントは、以下の4つです。
【健康にいいお鍋の作り方】
● タンパク質を2種類以上入れる
● 緑黄色野菜を必ず入れる
● きのこ類もおすすめ!
● 塩分を摂りすぎないようにする
それぞれ詳しく説明します。
たんぱく質は、炭水化物・脂質と並び三大栄養素の一つです。人間の体は水分が約60%といわれていますが、その残りの40%のうちの半分、全体の約16%をたんぱく質が占めています(体重60kgの成人の場合)(参考:「特定保険指導の実践定期指導実施者育成プログラム」)。
たんぱく質はアミノ酸からできており、筋肉や臓器などを作る重要な働きを持つ栄養素です。皮膚や髪の毛、筋肉を作る材料となってくれるほか、ホルモンや免疫物質としても重要な役割を担ってくれています。成長期の脳の発達にも欠かせない栄養素で、不足すると精神的な成長の妨げとなるリスクもあります。また、1gあたり4kcalのエネルギーとなります。
私たちの健康に欠かせないたんぱく質を多く含む鍋の食材は、以下のとおりです。
鍋におすすめのたんぱく質を多く含む食材
● 鶏団子
● 豚バラ肉
● 鶏もも肉
● 白身魚
● 豆腐
● 豆乳
ここからは、たんぱく質について、もう少し詳しくみていきましょう。
たんぱく質はアミノ酸の集まり
たんぱく質は、アミノ酸がたくさんつながってできています。そのアミノ酸は20種類あり、体内で必要量を合成できず食事から摂取しなければならない「必須アミノ酸」と、体内で合成できる「非必須アミノ酸」があります。
20種類のアミノ酸のうち11種類は、ヒトの体内で糖質や脂質から合成できます。体内で合成できることから「非必須アミノ酸」と呼ばれています。残りの9種類は「必須アミノ酸」と呼ばれ、ヒトの体では合成できないため、食品から摂取する必要があるアミノ酸です。
必須アミノ酸と非必須アミノ酸を提示するので参考にしてください。
必須アミノ酸 | バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン |
---|---|
非必須アミノ酸 | グリシン、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギン、チロシン、システイン、アルギニン、プロリン |
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質
また、たんぱく質には動物性と植物性があり、それぞれ以下の特徴があります。
種類 | メリット | デメリット | 食品例 |
---|---|---|---|
動物性たんぱく質 |
・体内で活用されやすい ・必須アミノ酸がバランスよく含まれている |
・脂肪が多いものがある | 肉、魚、卵、牛乳および乳製品 |
植物性たんぱく質 | ・低脂肪 | ・必須アミノ酸が含まれていないものがある | 納豆、豆腐、豆乳などの大豆製品や米、小麦、いくつかの野菜や果物 |
どちらがいいという話ではなく、どちらも私たち人間に欠かせない栄養素です。動物性1:植物性1を目指し、バランスよく摂取することを心がけましょう。
緑黄色野菜とは、厚生労働省により「原則として可食部100g当たりカロテン含量が600マイクログラム(μg)以上の野菜」と定められています。たとえば、ほうれん草、にんじん、かぼちゃなどがこの基準を満たす野菜です。
緑黄色野菜には、カロテンの抗酸化作用やビタミン、葉酸、カルシウムや鉄などのミネラル類などの健康効果があるとされています。
カロテンには体内の活性酸素を減らす抗酸化作用があります。またβ-カロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されるので「プロビタミンA」とも呼ばれています。緑黄色野菜にはカロテン類だけではなく、ビタミンCも豊富に含まれ、ほかにビタミンK・葉酸・ミネラルなどを多く含んでいます。
引用元: e-ヘルスネット
そんな栄養豊富な緑黄色野菜の中から、鍋にぴったりの食材を紹介します。
鍋におすすめの緑黄色野菜
● 水菜
● 春菊
● ほうれん草
● にんじん
● 小松菜
● ニラ
せっかく鍋でたくさん野菜を食べるなら、白菜やキャベツなどの淡色野菜だけでなく、緑黄色野菜も具材に取り入れて、より健康的な食事にしてみてはいかがでしょうか。
きのこもビタミンやミネラルが豊富でおすすめの食材です。食物繊維も豊富で、少量でも満腹感のある低カロリーでヘルシーな食材としても有名です。
ビタミンDについては、「日光浴で健康になろう!適切な目安時間や紫外線による影響を紹介」でも詳しく解説していますので、ぜひあわせてお読みください。
水溶性の栄養素に関しては、汁までいただくことであますことなく摂取できます。摂りすぎたとしてもとして体外へ排出されるので、過剰摂取の心配はありません。ただし、鍋の汁は塩分が多く含まれている場合が多いので、過剰摂取には注意が必要です。汁までいただきたい場合は、調味料を少なめにするなど工夫しましょう。
そんな栄養豊富なきのこの中で、鍋におすすめの種類は以下のとおりです。
鍋におすすめのきのこ
● しいたけ
● まいたけ
● えのき
● キクラゲ
● しめじ
● エリンギ
出汁にうまみを足してくれるきのこで、おいしく健康的な鍋料理を楽しんでください。
鍋は油を使わず野菜をたくさん食べられヘルシーな料理ですが、塩分に関しては注意が必要です。塩分は摂りすぎると、高血圧やむくみ、胃がん・食道がんのリスクを高めるといわれています。
実は日本は世界でも塩分摂取量が多い国で、以前より減ったものの、依然、成人男性1人1日当たり7.5g、女性6.5g未満とする目標量(「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参照)を上回っています。
近年における日本人の成人1人1日当たりの摂取量は、食塩相当量として男性11g程度、女性9g程度であり、以前に比べ減少しています。しかし、世界的にみると、なお、高いレベルにあります。
引用: e-ヘルスネット
市販の鍋の素には、塩分が多く含まれています。たとえば、一般的なパウチに入った3〜4人前の鍋の素には、大さじ1(約18g)もの塩分が含まれています。
鍋の塩分摂取量を減らすポイントを3つ紹介します。
● だしを取る(市販の鍋の素を使わない)
● ポン酢などのつけだれを付けすぎない
● 練り物を控える
まず、だしをしっかり取るのがおすすめです。前述のとおり市販の鍋の素には多くの塩分が含まれているので、昆布やかつおのうまみを引き出して減塩を図りましょう。
また、市販のポン酢は塩分が高いので、つけて食べる場合には注意が必要です。練り物も塩分が多い食材なので気をつけましょう。
ここまで、寒い冬においしい鍋の健康と、よりヘルシーに食べる方法について解説してきました。最後にもう一度、重要なポイントをおさらいしましょう。
まず、鍋の健康にいい点は
● 野菜をたくさん食べられる
● バランスよく栄養を摂取しやすい
● 血糖値を上げにくい食べ方を自然に実践できる
● 体を温めて代謝を上げる具材を摂取しやすい
の4点でした。
そして、健康的な鍋作りのポイントは、次の4つです。
● 2種類のたんぱく質をバランスよく摂取する
● 野菜はなるべく緑黄色野菜を多く入れる
● きのこ類を入れる
● 塩分の摂りすぎに注意する
これらのポイントを意識して、おいしく、より健康的に鍋を楽しんでください。